仮面と黒猫の探し物-5
3
『あの…ガリフさん?』
『なんだ仮面坊主。』
『仮面坊主って…。あの…、町まで乗せて行ってやる、と言ってくれましたよね?』
『おう。言った。』
『…ここは?』
『町だ。』
荷馬車に揺られて5日。
町が見えて来たとの声に目を覚ましたイルは唖然とした。
馬車の窓から広がる光景は、どうやっても少し立派な村としか形容出来なかった。
『ここらへんの地域では村のことを町って言うのかもしれないよイル。』
足を首の裏に回して毛づくろいしながらナナ。
『そんなこたぁないぞ黒猫。ここは町。おれの故郷、トトの町だよ。つっても半年前からの話だがな。』
イルとナナを荷馬車に乗せてここまで運んでくれた商人、ガリフは誇らしげに言う。
『半年前から…ですか?』
交易や市場で賑わう『町』に着くものだと想像していたイルは、窓の外の光景から目が離せない。
『おう。ちょっと前までここは村だった。だが我らが領主様は、数年前からこの村を町に発展させようと努力してなすった。国は広しと言えど、あんな立派な領主様はそういねぇ。んでそれが実って、とうとうトトの村は町と呼べる程に栄えたわけだな。うん。』
『…半年前から町?』
『おう。半年前から町だ。』
なるほど。町に成り立ての村ということか。
ならばそれほど賑わっていないのも解るし、
何を町と呼んで、何を村と呼ぶのか正直な所よくわからないイルは、人がそう呼べば村で、そう呼べば町なのだろうとなんとなく思う。