鮮やかに凛として-6
「やぁだってぇっっっ!!!離してよぉ!!!」
「離しマセンっっっ!!!」
「好き!!好き!!!喜屋武クンが好きだから離してよっっ!!!」
「投げ遣りに好きっていわんでクダサイよ!!!!ちゃんと、好きって言ってクダサイよ!!!」
「……、つか、卑怯じゃん……」
遊佐子は千歳を見据え、後ろにさがった。
しかし、一歩さがると背後には書架が聳えている。
遊佐子は入り口に近い方向に身体を移動させるが、瞬時に千歳に阻まれる。
前も後ろも左右全ても千歳に握られ、遊佐子は完全に籠の中に囚われてしまった。
「どこが??」
千歳は怯えた表情をする遊佐子を覗き込むように尋ねる。
「自分の気持ちを言わないトコ……」
遊佐子は目を逸らし、頬にかかった髪を所在なく玩んだ。
「いっつも言ってンじゃないデスカ!!!」
遊佐子の肩に千歳が手を置いた。
遊佐子は僅かに肩を竦め、不服そうに千歳を見据えた。
「……冗談で『好きだ』とか『付き合いたい』とか言ってただけじゃなにの?」
「冗談でも何でも、オレ、瀬戸内さんの事が好きだから、『好き』とか『付き合いたい』とか言っていたいンです。そんな感情なかったら、『好き』とかそーゆーコト、女子に言えないっス」
千歳は急速に乾いていく唇を舌で湿らし、遊佐子の次の一手を待った。
真っ直ぐに千歳を見つめる遊佐子の瞳が一瞬俯いた。
その瞳の動きを千歳の瞳が追った瞬間、遊佐子の唇が千歳の唇を覆った。
軽く千歳の唇を遊佐子が吸い上げ、甘噛みをする。
千歳の耳たぶを遊佐子の指先が撫で上げ、頬も首筋も優しく遊佐子は撫で上げる。
指先の温もりはそこに遊佐子がいるという安堵を千歳に与え、その感触は甘い快楽となり千歳に欲望を沸き立たせた。
遊佐子の舌に自らの舌を絡め、遊佐子の唾液を吸い上げ、遊佐子の唇を貪る。
「喜屋武クンのコト、好きだよ……。ちゃんと、オトコの人として好き……」
息継ぎをする遊佐子の口から何度も漏れる言葉は壊れてしまいそうなぐらい消えそうで小さくてとても脆かった。
その小さくて脆い言葉が、この感情がいかに禁忌を侵しているということ千歳に痛いほど悟らせた。
どのような禁忌を犯す恋だろうと千歳には関係がなかった。
禁忌を遊佐子と犯すならそれもいいだろう。
遊佐子と二人ならどんな行為も行動も全て尊く美しいことそのものになるのだから。