僕とあたしの夏の事件慕? 最終話 「あたしの事件慕」-12
「……そんなに……よかった?」
「……うん」
あたしは余裕を見せようと微笑むけど、身体の芯を溶かそうとする鈍い快感が邪魔して、上手く笑顔を作れない。
「キャッ!」
突然真琴の身体が重く圧し掛かる。もしかしてもう一回する気? ……と思ったら、真琴はスースーと寝息を立て始める。
なんだ、真琴もいっぱいいっぱいだったの、強がろうとして損しちゃった……。
でもさ、もう昨日までの幼馴染なんかじゃいられないのかな。
ちょっと寂しいけど真琴は男だし、しょうがないよね。
寝顔はまだまだ女の子みたいなのにさ!
あたしはもう少しこの恍惚に浸っていようと、重く圧し掛かる真琴を抱きしめた。
◆――葉月真琴――◆
十分、いや十五分くらい寝ていたと思う。
少し強い匂いを感じ、僕は目を覚ます。
目の前には、柔らかさと硬さを併せ持つ脹らみ、そしてピンク色の突起。
まだミオは僕のことを抱いていてくれたんだ。
その事実が汗の乾いたすっぱい匂いを心地よいものに変える。
「……んもう、あんまり恥ずかしいことしないでよ……」
「だって澪が僕を抱いていてくれたんだもん、嬉しくって……」
「あたしはただ、アンタが重いから身体を動かせなかっただけよ?」
そっぽを向いて言うけど、これも強がりだ。
「何でも良いよ。今こうして肌を重ねていられるのが嬉しいんだし……」
もう一度抱きしめようと思って手を回す。
「もう! 起きたんならさっさとどきなさい!」
さっきまで優しかった澪の手が僕の背中に爪を立てる。
「いっ、痛いよ、ゴメン……わかったから、手を放して!」
少し悲鳴に近い声を上げて、ようやく解放される。
「あんまり調子に乗っちゃだめよ! わかった?」
「はあい……」
「それじゃ、あたしシャワー浴びてくるから……」
澪は着替えを持って部屋を出て行く。
僕も仕事を終えて下を向いているモノをトランクスにしまい、服を整える。
立ち上がると、カーテンの隙間から覗く日は高く、窓を開けると気持ちの良い風が、火照った身体の熱を奪う。
それは澪のくれたぬくもりが奪われることでもあると思う。