春と囀ずれば-1
気がついたら。
そういうムードの気配も合図になるような言葉もなかった、…と思う。
ただ――言うなら手が触れたから。
指がぶつかって、あ、と思った瞬間には、私の手は引き寄せられてハルの手にからめとられていた。
視界一面すべて近すぎるハルにうまってる。
「……ハル、」
「目、閉じて。紗英さん」
目を閉じれば一つ一つの感覚が敏感になる。
指一つ一つをゆったりと絡め撫でられながらキス、キス、キス。
触れるだけのバードキスから、だんだん唇の周りをびしょびしょにしながらの濃厚なキス。
唇をペロリ舐め合わせ、舌同士をクチュクチュと擦られれば、舌にすら鳥肌がたちそうなくらいぞくぞくする。
「ふぁ…ん、はぁ…っ」
離れた瞬間にかかるハルの息が熱く顔を撫でて、荒い私の息は吐き出す度やけに甘ったるく感じる。
「映画、とちゅう…」
「そんなのよりコッチ」
「……もう、」
全然思ってもないことを口走る私は相当に意地っ張りだ。
正直DVDの存在なんて忘れてた。
そのくらいハルのキスは熱烈で穏やかなのに荒々しく、私の理性とかモラルとか……そういうのを剥ぎ取ってしまう。
代わりにつきない貪欲や…熱い欲情で体を満たしてしまう。
唇をあわせて味わったら、もっと、もっと、と……ねだってしまいたくなる。
ここでやめられたら私はたまんない。
今だって子宮の辺りがずくずくに疼く。
腰にもぞわぞわしたむず痒い感覚に動きださないようにするので精一杯だ。
「紗英さんカワイイ」
好きだよ
そう笑いながら顔中にキスを散りばめてくるハルは心底楽しそうで、内心ムカムカするやら恥ずかしいやら……自分自身わけがわからない。
「どこがよ……」
「さあ?どこでしょう」「な、に…ぁ、そっ…れぇ」
顔のどこかにキスをして、脇腹や腰の辺りをさわさわと撫でられ。
唇が触れるか触れないかで撫で、背筋をうっそりねちっこくなぞりあげられ。
またくりかえし。
「はっ…あ……ん、ふぅ」
他意のなさそうな触れあいと、意味深な愛撫が何度も交互に繰り返され、じれそうになる。