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『トランス〜反対側と夢幻〜』
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『トランス〜反対側と夢幻〜』-2

朋伸の腹にはナイフが刺さり、彼は倒れた。辺りには赤い血が飛び散っている。真っ白な雪があるゆえに余計に目立つ。これが彼の決意なのか? 龍仁はそう感じていた。しばし茫然としいた。いや、茫然とするしかなかったというべきか。頭の処理が視覚から入ってくる今の状況に追い付いていけていないのだ。そして、今の状況に気付いたときには既に彼は倒れており、雪が積もっては消えを何度か繰り返したあとだった。

彼は冷たく既にこときれていた。季節は春。だが、鈍色の空から舞い散るのは白い雪。それと同時に満開に咲いた桜も散る。シンシンと降る雪の音しか聞こえない。そんな幻想的な風景に一人の男の叫びだけが響いていた……。


その後は龍仁に言わせるとよく覚えていないらしい。気が付いたら、自分の部屋にいて、消印の無い手紙を片手に持っていたそうだ。

 これより下記の部分は龍仁の日記と朋伸からの手紙より一部抜粋する。


「『龍仁、これをお前が読んでいるということはオレがもうお前の目に映ることはないってことだよな? だったら賭けはオレの負けだ』

 つまらない賭けをしたことを思い出した。死ぬまで友達でいられるか? という冗談混じりで言った賭けを……。

『なぜあいつらを殺したか? それはお前の為だ。お前は小さい頃母親を亡くしずっといじめられてきて、何度も助けようとして、いつも頑なに拒否された。オレは親友であるお前に何も出来ない。所詮赤の他人に過ぎないのか? そう痛感した。だが、考えを変えた。お前の為に何が出来るのか、と。その結果がこれさ。お前の為に一線を越え、そして、お前とは反対側の世界に行ったんだ』

誰がそうやってくれと頼んだ? オレなんかの為に人殺しまでしなくてよかったのに……。

『こういうと責任転嫁になるかもしれない。だが、お前はかならず言うだろう。「オレなんかの為に……」と……。そう卑下する必要はないさ。オレにとってお前は憧れで、一番の親友だった。いや、今でも親友だと思っている。だから、わかってくれ。お前の為にやったことを……』

それをいらん世話っていうだよ、お前は。いつだってそうだ。人に相談せず、勝手に物事を決めて、実行する。それを上手い具合に人に押しつける。死んじまったら、何にも出来やしないのに……。

『オレはもう書くことはない。だから、もう一度書こう。お前はオレの誇りで、最大の親友だ。お前が親友でよかったよ』」

これが武田龍仁の最初の事件の犯人の動機の物語。そして、生涯の中で唯一親友と呼べた者の死。

これをきっかけにして、彼は変わり、そして、ある事件に遭遇する。それはまた別のお話……。

END

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