僕とあたしの夏の事件慕? 第三話 「引っかかる部分?」-9
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「真琴さん、我慢してくださいね」
「イタタタタッ……」
情けない声を出しながらも、愛美さんのおかげでなんとか窓から解放された。
「いったいどうなさったんですか?」
「えっと、さっきの泥棒事件のことを調べていたら、いつのまにかこうなっちゃって……。その、ありがとうございます」
「どういたしまして……」
微笑む愛美さんに僕はどこか気恥ずかしくなり、ふわついた気持ちを悟られないよう視線を部屋に移す。
部屋の様子は使用人部屋だけにこじんまりとしており、ベッドと机、クローゼットがあるけど少し狭い。壁紙が他の部屋に比べて新しく、もしかしたちょっと前まで物置として使われていたのかもしれない。
「あの、真琴さんはご主人さ……藤一郎様のことで、何か探しておられるのですか?」
「え、まあ、そうですけど……」
年下の僕にまで敬語を使う愛美さんについウソをつくのを忘れる。梓さんに愛美さんは信用できないと言われていたのに。
「もし、何か分かったら、私にも教えてもらえませんか?」
「え、……どういう理由があるか知りませんけど、愛美さんには関係ないのでは?」
やっぱり真二さん達とグルなのかな?
「お願いします。そうしないと私、困るんです……」
愛美さんは僕の手をとり、詰め寄る。顔が十五センチくらいの距離まで来られると、なんか甘いような、すっぱいような匂いが鼻腔を擽る。これって香水……? 違う……でもいい匂い……。
「あのことをお嬢様方に知られたら、きっとお二人を傷つけることになります。ですから……お願いします、真琴さん……」
「僕は別に、探してなんか……」
僕は相変わらずウソが下手だ。
「私はこんなことしか出来ませんけど……」
手の平に冷たい感触、それをきっかけに理性が薄れていく。
「カーテン……閉めますね……」
僕は抗わなかった……。