僕とあたしの夏の事件慕? 第三話 「引っかかる部分?」-8
***―――***―――***
ベランダを逃げながらふと思った。
後ろから迫り来る二人と開かないドアと窓、一階に飛び降りるには少し高いし、勇気がない。つまり万事窮すというわけだ。
第三の選択は第一の選択肢と同じで、二人の怒りを買うのでは?
「どうなさいました?」
突然の声に振り向くと、愛美さんが優しい笑顔で僕を見ている。
「スイマセン、中に入れてくれませんか?」
「申し訳ありません。使用人部屋にはドアがついておりませんので、ベランダと出入りができないんです」
本当だ……でも、窓が開いているなら入れるかも!
「すいません、愛美さん。失礼します!」
僕は必死になって窓によじ登る。だけど、追いついてきた二人にズボンを掴まれる。
「真琴君、逃げるなんてずるいわ!」
「そうよ、どっちが大きいか……」
「確かめてるんだよ! 愛美さんの部屋から外に出られるかどうかをさ!」
咄嗟のウソ。だけど本来の目的を思い出したのか、二人は手を離す。それとも無意味な争いを避けるためかな?
「それで、入れそう?」
「うん、僕ぐらいなら入れると思うけど、二人は無理じゃない?」
「「そ、そうよね、あたし達はその……、色々突っかかるところがあるしね……」」
二人は穏やかな声で頷きあう。良かった、今度は上手く誤魔化せた。
「ん? あれ……、澪、あの二人……」
「ホントだ、何処行くんだろ?」
二人は僕の窮地をほっといて何かを見つけた様子。
「どうしたの? 何かあったの?」
僕も見たいけど身動きが取れない。
「妖しいわね、何かあるかもしれないわ」
「そうね、追いかけましょ!」
そう言って二人は僕を置いてベランダを去る。できればこの中途半端な状況を抜け出すのを手伝ってもらいたいのに……。