僕とあたしの夏の事件慕? 第三話 「引っかかる部分?」-7
「通れそうだけど……」
「やっぱりアンタが犯人なの?」
「そんな! 澪こそどうなのさ」
「あたしは無理よ」
「なんで?」
「……アンタと違ってつっかかるものがあるからよ」
「へー、何処にあるのかしら?」
梓さんが澪の胸元を見ながら言うので、僕は慌ててそっぽを向き危険を回避する。
「アンタこそどうなのよ!」
「私はする必要がないでしょ? 鍵なら姉さんから直接借りられるんだし」
「すんなり入れるのが怖いんでしょ? 梓お嬢様はスレンダーだもんねぇ!」
「うるさいわね、やればいいんでしょ? そしたら澪もやるのよ!」
梓さんはぶつくさ文句を言いながらも窓によじ登り、ごそごそと蠢く。
中で椿さんと何か話をしているみたいだけど、難なくくぐれたみたい。
しばらくして寂しそうな顔の梓さんが戻ってくる。
「……今度はアンタの番よ」
澪は顔を引きつらせるが逃げることは出来ず、窓によじ登る。
椿さんに照れ笑いをしながらも、予想通りスンナリと窓をくぐる。
がっくりと肩を落とした澪に、僕もかける言葉が見つからない。
「あららぁ……澪さん、いったい何が、何処につっかかるっていうのかしら?」
「今日はスレンダーな日なのよ……」
「何よそれ、ばっかじゃない?」
なんだか目的がずれつつある……っていうか完全にずれているんじゃな?
「ねえ、二人とも……そんなことより、犯人を探さないと……」
「「真琴は黙ってて!」」
本日二度目のお叱りを受ける僕。何か悪いことしたっけ?
しばし二人はにらみ合うが、澪は何か思いついたらしく僕に向き直る。
「……真琴、アンタから見てどうなのよ」
「え……? 何が」
話の流れから予想はついている。だけど、できることならしらばっくれたい。
「その、私と澪、どっちが大きいか……よ」
大きいって胸のこと……だよね? えっと、多分どっちもどっちだと思う。でも、そんなこと言ったら三度目がくるだろうし、逆に片方を選べば、もう片方に……。
「そんなこと……解らないよ……」
僕は第三の選択、逃亡を選んだ。