僕とあたしの夏の事件慕? 第二話 「真夜中のカクレンボ」-7
「どうしました、理恵さん!」
見るとライトを落とし、頭の上を必死に手で振っている。
「……クモの巣よ、私こういうの苦手なの、なんとかしてよ」
「なんだ、そんなことですか」
それでも理恵さんにとっては一大事らしいので僕も払うのを手伝う。
「理恵さんも苦手なものがあるんですね」
「ちょっと、それどういう意味よ?」
「どうって、理恵さんはもっと怖い人かなって思っていましけど、蜘蛛が怖いなんて結構可愛いトコあるんですね……はい、終わりましたよ」
ようやくクモの巣を払ったのに、何故か不機嫌そうに僕を睨む理恵さん。何か悪いことしたかな?
「……真琴君、私のライト取ってくれる?」
言われるままライトを拾おうとすると、理恵さんに足を捕られてステンと倒れてしまう。
「イッタタ……何するんですか、理恵さん」
「私を笑った罰よ……」
理恵さんは僕の背中を抑えつける。
「すみません理恵さん……もう笑いませんから許してください」
「ダーメ!」
さらに僕の手からライトを奪い、明かりを消す。
「わ、ちょっと、なんで明かりを消すんですか!」
「暗いのが怖いの?」
「そういうわけじゃなくて……」
僕は何とか理恵さんの束縛から逃れようと無我夢中で手を伸ばす。すると右手が布に包まれた柔らかいモノに触れる。
ふかふかして暖かいそれは、手の平に心地よい感触をくれる。
「あん、もう……、悪い子ね。暗闇に乗じて私の胸を触るなんて、真琴君のエッチ」
胸って、この感触は理恵さんの……。
「す、スイマセン、そんなつもりじゃなくて」
僕は慌てて手を離し弁解をする。
「慌てちゃって可愛い……ねえ、君って男の子……だよね?」
「何言ってんですか、当たり前でしょう!」
「だってこんなにかわいい顔してるし、本当は女の子なんじゃないの?」
そりゃ今日も楓さんに間違われたけど、僕はれっきとした男だし、ついでにいうとその証拠が自己主張を始めている。
「ちょっと調べてみよっかな……」
「何するつもりですか!」
「学術的調査よ、男の子の身体の……」
理恵さんは仰向けなったモルモットを見下ろし、ごそごそと手をまわす。そして、変化の著しい調査対象を握り締め、戸惑ったように首を傾げる。
僕はその一瞬の隙を見逃さず、身を翻し階段を目指す。
しかし、脱げかけのズボンが足に絡まり、まるでハイハイをする赤ん坊のようになり、前に進めない。