僕とあたしの夏の事件慕? 第二話 「真夜中のカクレンボ」-2
「椿さん、あたしと真琴が相部屋になりますよ」
これが妥当よね。後は梓と椿さんが相部屋になれば部屋も足りるはずだし。
「ダメダメダメ、絶対ダメ! いくら幼馴染でも高校生なんだから! 一緒の部屋なんて許さないわ」
そしたら梓が噛み付いてくる。なんか賑やかになってきたわね。
「それはそうだけど、見ず知らずの人と一緒は困るでしょ?」
「椿お嬢様。一階の書斎なら簡易ベッドもありますし、そこをおつかいになられてはいかがですか?」
「そうね、それがいいわ」
ほっと一息つく梓。何をそこまで必死になっているのかしら?
「でも、部屋は一つ足りないよ」
「それなら私がその書斎を使わせてもらえるかしら? 書類の整理もあるしね。梓ちゃんと澪ちゃんが一緒の部屋になればいいんじゃない? 女の子同士、間違いなんて起こらないでしょ?」
理恵さんはわざとおかしな言い回しをするけど、真琴と一緒だからって間違いなんて起こさないわ。……多分ね。
「そうですね。愛美さん、荷物お願いね」
「はい、梓お嬢様」
そう言って愛美さんは食堂を後にする。今からベットメイキングをするのだろうけど、この人数だと大変だと思う。
「あたし荷物運ぶの手伝ってくる」
あたしは少しでも負担を軽くしてあげようと、後に続く。
「なら僕も手伝う」
「待ってよ、真琴君が行くなら私も行くわ」
真琴があたしに続くと、梓まで立ち上がる。それなら最初から自分でやればいいのにね。
「おいおい、僕の荷物壊れ物もあるんだから勝手に触ったりしないでくれよ」
さらに楓さんまで……。でもま、自分のことなんだしね。
***―――***―――***
結局、自分の事は自分でする運びとなり、各々の荷物を抱え、部屋を行き来する。
あたしと梓は二人部屋になり、代わりに楓さんが奥の部屋に引っ込む。あの部屋は狭かったし一人でも充分だと思う。ただ、真琴に広くて日当たりの良い部屋を取られたのは癪だわ。真琴なのにさ。
「私はこれで失礼いたします。何かありましたらお呼びください」
「はい、ありがとうございました」
一礼して部屋を後にする愛美さんに、庶民のあたしはやっぱり頭を下げてしまう。
「澪は庶民の典型ね?」
「返す言葉も無いわ……」
あたしは適当にベッドに腰をかけて照れ笑い。
「でも、お金持ちって想像していたよりずっとハードなのね。今日一日だけで梓の苦労が分った気がするわ」
原因はあくまでも狸たちにあるんだけどね。