崩壊〜親密〜-4
同時刻。溝内邸。
「ただいま」
仕事を終えて真仁が帰って来ると、出迎えた優子の表情がさえない。
「どうした?」
真仁は鞄やスーツの上着を渡し、寝室に向かいながら訊ねた。
「それが、あの子。今日も涼子さんの家に行ってるのよ」
「何か理由があるんだろ?」
「一昨日の、なんとかって検査の結果を知らせるからって…」
「だったら問題無いだろう」
真仁は、話を打ち切るとスーツを脱いで寝室を出た。が、優子はなおも喰い下がる。
「でも、あの子は未成年よ。こういう場合、親も同伴のハズでしょう」
「違うというのは大した事無かったからさ。おまえの思い過ごしだよ」
「だったら電話で済む事じゃない」
次第にエキサイトしていく優子の熱弁に、真仁はうんざりと言った様子だ。
「いったい、何を言いたいんだ?」
「だって、今まで電話1本、挨拶の1度だってされた事無かったのに、急に仁志を家に招くなんて…」
「それはアイツを貰い受けする時に取り決めたじゃないか。一切、接触しないと。
今回だって非常時みたいなモノさ。それに、涼子さんだって覚えてるハズだ。アイツが18歳になるまで絶対に教えちゃならん事を…」
真仁に諭され、少しは気持ちが楽になった優子の顔に笑みが戻る。
「…ごめんなさい。つい、考え込んじゃって。すぐゴハンにしますから」
「いや、その前に風呂に入らせてくれ」
真仁は、そう言うと風呂場へと向かった。一人残された優子は、テーブルに着くと深いため息を吐いた。
火種は、まだ燻り続けていた。
「何が好きか分からないから、とりあえず色々用意したの」
小さなテーブルには、不釣り合いな位大きな鉢盛りがデンと置かれているのを見て、さすがの仁志も慌てた。
「ちょ…涼子さん!オレ、こんなに食えませんよ」
「何言ってんの!男の子でしょ。冷蔵庫にはピザも買って来たんだから」
「でもさ。この前も色々な料理出してくれたし…何でこんなにしてくれるの?」
自然に浮かび上がった疑問。仁志は何気なく聞いたつもりだった。しかし、反応した涼子の顔は青ざめ、深刻さを物語っていた。