崩壊〜親密〜-3
「エッ?もう」
検査と聞いて、手術みたいなモノを想像していた仁志は拍子抜けした。
「検査結果は、後日お伝えますから」
涼子は看護師に、“次の患者さんの準備具合を見てきて”と言って診察室を離れさせた。
ファイバーが抜き出される。排泄物を出す時のような感触に、仁志は気持ち良さを感じた。
「どう?また勃っちゃった」
突然、涼子の手が患者服の隙間に入り込み仁志のペ〇スを握った。
「な、何をすんだよ!」
手を払い退けようとする仁志。だが、涼子はファイバーを抜きながらペ〇スをシゴいた。
「こんなにして…またウチに来ない?」
「エッ?」
「今日はダメだけど、明日は日勤だから晩ゴハン作って待ってるから」
その時、看護師が入って来た。涼子は、“お疲れ様でした”と口調を事務的に戻すとクルリと仁志に背を向けた。
仁志も合わせるように“ありがとうございました”とだけ伝えて診察室を後にした。
翌日。仁志は自室のベッドに横たわり明日の事を考えていた。
「どうしようか…」
仁志は迷っていた。大腸の検査も終わった今、もう涼子の家に行く必要性は無い。
だが、心の中では、また会って彼女の様々な面を見てみたいと思っていた。
翌日、夜。仁志は涼子の自宅前に来ていた。
(…やっぱりマズいよな。いくら叔母さんでも、一人暮らしの女性の家に来るのは…)
事ここに及んでも、未だ、どうするか決めかねて玄関付近に佇む。いたずらに時間だけが過ぎていく。
そんな仁志を見つめる目。マンションの住人だろうか。通り過ぎる人々が投げ掛ける視線は冷たいモノだった。
(…これじゃ変質者みたいだな…)
確かに、こんな場所に佇んでいては良い印象を与えない。そう考えた仁志は、意を決して玄関へと向かった。
ドアを潜ると10坪ほどのエントランス・ホールが有り、その中央にインターフォンが据えられている。仁志は、予め教えられた部屋番号を打ち込んだ。
すると、明るい涼子の声がスピーカー越しに聞こえる。仁志は一気に喉の渇きを覚えた。
「はい。どちら様です?」
初めてココを訪れた以上の緊張が仁志を包む。たった一言が出てこない。
そんな訪問者を不審に思ったのか、涼子は少し強い口調で訊いた。
「あの、どういった用件です?」
それでも、言葉が出ない仁志。涼子は業を煮やした。
「いい加減にしなさい!もう切るわよ」
「待って!」
ようやく出た声は上ずっていた。
「…あの、仁志です…」
緊張した面持ちの仁志に対し、涼子は声を弾ませ嬉しさを表現する。
「何してたの!早く入ってらっしゃい」
目の前の、エレベーターに通じるドアが開かれた。そこを潜った仁志は、エレベーターに乗り込むと涼子の待つ部屋へとボタンを押した。