僕とあたしの夏の事件慕? 第一話 「お金持ちは色々タイヘン!」-6
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僕らは食堂に通された。
ある程度予想はしていたけど食堂も平民の暮らしとは別世界らしく、白を基調とした壁には別荘の絵が飾っており、アンティークな柱時計にそれっぽいシャンデリア。中央には十人程度が食事のできるテーブルがあり、まっ白のテーブルクロスが敷かれている。
お手伝いさんが紅茶を淹れてくれたので、食堂に甘い香りが広がる。
「いただきます」
リンゴの香がするその紅茶はいつも飲んでるティーバックの紅茶なんかよりずっと香りが良く、苦いはずのお茶の味が不思議と甘く感じた。
「おいしい……」
「光栄です」
「お金持ちはいつもこういう場所で、こういうのを飲んでるのかしら?」
澪も同じ感想らしく、お代わりをもらいながら深々とため息を付く。
「普段の梓からは想像できないわ……」
確かに普段の梓さんは澪と喧嘩ばかりしているし、学食で僕達と一緒におそばを食べていて良家のお嬢様というイメージが浮かばない。
「お待たせ……」
それでもこの豪華な別荘に臆すること無く馴染んでいるところを見ると、なんとなくお嬢様という感じがしてくる。
「ちょっと梓、客を待たせて何処行ってたのよ……こっちは待ちくたびれたわ」
「澪は真琴君のおまけでしょ? お客様は真琴君だけよ。愛美さん、私にもお茶を」
「はい、かしこまりました」