僕とあたしの夏の事件慕? 第一話 「お金持ちは色々タイヘン!」-4
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真澄家の別荘を前にして、僕と澪は言葉を失った。
まず目についたのが大きさ。多分、僕の家と澪の家を足したぐらい。だけど、蔵まで併設されているからてんで相手になりそうにない。
外装は映画に出てくるお城のようなゴテゴテしたものじゃないけど、それでも窓枠の一つ一つが名画を飾る額縁のような装飾で縁取りをされている。
上を見あげると、屋敷をぐるっと一周するようにベランダが設置されていたりと、普通じゃない。
「ここが梓の家の別荘?」
「そうよ、私は古臭くて嫌なんだけどね」
確かに別荘の様相は今風じゃないけど、いわゆるゴシック建築ってやつかな?
「ホントにお金持ちだったんだ……」
「思い知った? 平民」
「まいりました……」
目を丸くしたまま肩を落とす澪に梓さんはトランクを渡す。
「……ちょっと、なんであたしが梓の荷物を待たないといけないの?」
「力仕事は平民の仕事でしょ? あたしお箸より重いものは持ちたくないの」
梓さんは上から澪を見下ろして言う。また喧嘩になったら大変なので、僕は慌てて二人の間に入る。
「僕が持つよ」
トランクを受け取ったけど、けっこう重い……。いったい何が入っているんだろ?
「真琴君はお客さんなんだから、そんなことしなくていいのに」
そう言ってトランクを運ぶのを手伝ってくれるけど、それなら最初から自分で運べばいいのに。