僕とあたしの夏の事件慕? 第一話 「お金持ちは色々タイヘン!」-2
「ねぇ、この村は何か無いの? 海とかそういうの……」
最後の望みをかけ梓にレジャー情報を求めるが、彼女は困ったように首を傾げて一言。
「んー……、無い」
一縷の望みすら断ち切る言葉に、あたしはとうとうしゃがみこむ。
「……帰りたい……」
「なら帰れば、どうせ澪に用なんて無いんだし。真琴君がどうしてもって言うから連れて来ただけなんだし」
さも厄介者のように言われるとすごく腹が立ってくる。っていうか、こんな美少女がオマケで付いてきてるんだから喜ぶべきじゃない?
「あたしは真琴の保護者として仕方なく……」
それにコイツは見た目通りのもやしっ子なんだから、あたしが守ってあげないと。
「真琴君は澪に保護してもらうほどやわじゃないわ。さっさと真琴君離れしたら?」
梓は麦藁帽子のリボンを弄りながら涼しそうに言う。
「真琴君離れ? あたしはただ真琴がだらしないから……」
「言っておくけどね、真琴君は成績だって性格だっていいし、ちょっと小柄だけど、澪と比べてずっとしっかりしてるわ!」
梓が耳まで真っ赤にして食いついてくるもんだから、あたしもついムキになってしまう。
「アンタが真琴の何を知ってるっていうのよ!」
「そっちこそ! ただの幼馴染ってだけじゃない!」
しばらくにらみ合った後、あたし達はフンとそっぽを向いた。