僕とあたしの夏の事件慕? 第一話 「お金持ちは色々タイヘン!」-12
「愛美さんは仕事でやっているのよ?」
言い返すことの出来ないあたしを梓はふふっと笑う。
フンだ、どうせあたしは平民よ!
「ベランダに出てもいいですか?」
「ええ、いいわよ」
真琴がベランダに出るのであたしもついていく。だけど、そこからの景色は林と畑ぐらい。
「なんか本当に何も無いところね……」
「田舎なんて大体そんなものよ。とはいえ、私も退屈だけど」
そう言ってつまらなそうに部屋を出る梓。もしかして、退屈しのぎにあたし達を呼んだのかしら?
***―――***―――***
「ただいま!」
ようやく戻ってきたと思ったら、真琴は楽しそうに探検の報告をする。
「はいはい、お帰りなさい……それで、何か見つかった?」
「んー、なんか非常階段みたいだね、敷居がないし」
「そりゃマンションじゃないんだし、必要ないでしょ?」
「そうだけど、ちょっと気になってさ……」
「……もしかしたら何か秘密があるのかもしれないわね? 何かを隠す為とか」
あたしは冗談半分でそういうけど、真琴は真剣な表情で黙り込む。
「ちょっと冗談よ。いくらなんでもそんな都合のいい展開あるわけないでしょ?」
「そうかな……」
そうよ、あたし達がここにいるのだって、たまたま夏休みに予定が無くて、たまたまお金持ちの友人が別荘に招待してくれて、たまたま遺産相続の問題があるだけの、よくある話だわ。
真剣に考えこむ必要なんかないわよ……ね?