燕の旅童話集(全七編)-9
「どうしたの、なにか辛いことがあったの?
私に話してごらんなさい。」
思わず、そう言ってしまいました。
「私はね、撚糸の仕事をしているの。日毎日糸を撚っているの。あかぎれうぅーん、仕事が辛いんじゃないの。
こんなにあかぎれがひどくなったけど、そんなことじゃないの。
みんなが私のことを、『田舎娘』っていじめるの。
そして、一生懸命働けば働くほど、みんなにいじめられるの。
主任さんはいつも私を可愛がってくれて、なにかと親切にしてくださるの。
だけど、それがまた面白くないって、みんなが・・・・・」
「そう、それはひどいね。
でも、あなたが悪いんじゃないわ。
一生懸命頑張ってるもの。」
「でもやっぱり、みんなにいじわるされるのはいやだわ。」
「そう、それが悲しくて泣いていたの。
でもあのお日様をごらんなさい。
いつも、たった一人で輝いていらっしゃるわ。
真面目に一生懸命働いて人達に、たくさんの光を与えていらっしゃるわ。」
「でも、私だけじゃないわ。
ちっとも働かない人達にだって光はあるわ。
そんなの不公平よ。」
「お日様は、そんなことはとっくの昔にご存じよ。
いつかは気が付くだろうと、ああやって毎日光を与えられてるの。
あなたの方が早く気が付いたのだから、得をしたわけよ。
他の人達はそれにまだ気が付かず、自分を惨めにしているのよ。」
「でも、いじめられるのは、もうイヤ!」
「こう思わない。
『可哀想に、この人は自分自身をいじめてるのね』って。
お日様の心を知らない人は可哀想よ。
ねっ、そう思えば、腹も立たなくなるわ。」
「ふーん。
そうね、そうだわ。
いじめられても、私にはお日様が味方してくれるのね。
それよりも、早くみんなが気が付くように、今よりもっと一生懸命働くことね。
そして、早くみんなも気が付いてお日様にたくさん感謝しなくっちゃ。
ツバメさん、ありがとう。
私、帰るわ。
じゃ、お休みなさい。」
その織工さんは、喜んで帰っていきました。
私は、今朝の嫌なことも忘れて、またすがすがしい気持ちで飛びました。
山のかげに隠れたお日様も、満足そうに微笑んでいると思います。