燕の旅童話集(全七編)-2
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ある国の王様の話です。
その国は、王様の権力が強いところでした。
王様が「だめだ」と言うと、何事も進められませんでした。
ある日、王様は乞食を呼んで尋ねました。
「おまえは、私が羨ましいか?私は、おまえが羨ましいぞ。」
乞食は目を丸くして言いました。
「何をおっしやられます。私は王様が羨ましいです。おいしいご馳走を食べ、たくさんの召使いたちを使われ、何より暖かい御布団の中で眠ることができるのですから。」
「いやいや、王様は窮屈だ。いつもおまえたちが幸せに暮らせるようにと、考えねばならぬ。他国からの侵略の時には、多くの兵士に命令を出さねばならぬしの。それに又、いつ同盟国の裏切りにあうかもしれぬのだ。気が休まる時がない。やはりわしは、おまえが羨ましい。」
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屠殺場から、おじいさんがたった一人で出てきました。
肩を落として、しょんぼりとしています。
空の上を、燕が飛んでいます。
くるりくるりと、何度も飛んでいます。
そのとき、教会の鐘が鳴り響きました。