燕の旅童話集(全七編)-12
辺りにはもう夕暮れが迫っています。
緑の木々と草花、緑一色です。
その中に一輪咲く白百合の花。
その美しさは例えようのないものです。
私は、じっと見ていようと思います。
もう短い命です。
でも私は、この生命が終わるまで見ているつもりです。
何故泣いているのか、私にはわかりません。
でも思いたいのです、私のために泣いている、と。
私は幸せでした、本当に幸せでした。
そして今も幸せです。
私の最後の時に、私のために泣いてくれる人がいる。
心が安らぎます。
穏やかな気持ちです。
もう、不安はありません。
ありがとう、ありがとう。
この美しい地で、私は眠ります。
みんなの幸せを心から祈り続けて、おやすみなさい。