ストーカー-7
『冗談じゃないよ。私の本当の名前知りたい?それはね、朝永美由紀。』
『うるさいうるさいうるさい!!』
怒鳴り散らかし、その場にしゃがみ込んだ。いくら冗談とは言え、奴の話をするのはもうこりごりだった。しかし、秀次はある事実に気付いてしまう。
『なんで……、朝永って苗字知ってるの………。』
『だから言ったじゃない、私が美由紀だって。』
秀次は、美由紀のことをしゃべりはしたが、朝永という苗字までは打ち明けていなかった。それを聞いた途端、背筋が凍った。
『何年間待ったと思う?中学校三年生で振られて以来、ずっとこの日を夢見てきた。顔を秀ちゃん好みに整形して、声まで変えて、名前も変えて、それから……。』
『止めろ……止めろ!!』
そう言って、壁際にしゃがみ込んだ。頭を抱え込み、何も聞こえないようにした。しかし、それでも声は耳に響く。
『私、殺すって言ったよね?結婚したらただじゃおかないって。でも、結婚しちゃったね。』
そう言うと、バッグからナイフを取り出してゆっくりと秀次に歩み寄った。
『でも安心して。殺すなんて書いてたけど、貴方だけにそんな思いさせないから。私も貴方の後を追って自殺するから。』
『止めてくれ、頼む…止めてくれ……。』
か細い声ですがりつく声を無視するかのように美由紀は近づいてくる。
『俺が悪かった!振った俺が悪かったんだ!!頼む、止めてくれ!まだ死にたくはないんだ!!』
『気を楽にしてね。じゃあ、いくわよ。』
『やめろー!!』
『だから言ったでしょ。貴方と私は永遠に結ばれる運命にあるのよ。』