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ストーカー
【サイコ その他小説】

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ストーカー-6




午前十一時丁度。もうすでにこのときには美由紀のことなど頭にはなかった。後はひたすら結婚式を乗り切る為に緊張するだけ。それで精一杯だった。
深く息を吸い込み、そして息を吐いた。その様子を見た秀次の母親が声をかけた。
『リラックスして!大丈夫だから!!』
そうだ、と自分に言い聞かせ、顔を自分で平手打ちした後に美咲の登場を待った。しかし、この瞬間秀次はある些細な事を不思議に思っていたのだが、そんな事考える暇もなく美咲が登場した。
音楽が鳴り響き、大きな扉が開かれた。夢に見た瞬間が今まさにそのときであることに快感を得ながら、美咲が一歩一歩踏みしめるのを黙って見つめていた。
やがて美咲は目の前までたどり着き、こちらを見つめた。しかし、あたまにかかったレースでなかなか顔が見えない。
『新郎に告ぐ。いかなる時も彼女を愛し、そばで支え続けることを誓いますか?』
ぼーっとしていたことで、突然のような気がしていた。
『誓いますっ。』
誓います、と答え、つばを飲み込んだ。
『では、新婦に告ぐ。いかなる時も彼を愛し、そばで支え続けることを誓いますか?』
『誓います。』
ゆっくり、噛みしめるようにして美咲は言った。
『では、指輪の交換を。』
そう言われると、お互いに指輪をとりだしお互いにはめた。
『誓いのキッスを。』
神父が“キッス”と言ったことに対して二人で笑いをこらえながらも、美咲のレースをかきあげ顔を一瞥した。そして、顔を近づけて唇と唇を合わせた。その瞬間記憶が飛んだ。
次正気に戻ったのは部屋に二人で戻ったときだった。
『緊張したねー!』
美由紀が嬉しそうに言った。それをみて、少しほほえましい気持ちになった。
やっと落ち着けるな、と思ったとき、式が始まる寸前に不思議に思っていたことを打ち明けた。
『美咲の知り合いいなかった気がするんだけど、なんでかな?親御さんがいないのはわかるけどさ。』
美咲は小さい頃に親を亡くしたので、親はいなく施設に預けられたのだった。
『わたし、友達いないんだ。寂しいでしょ?だから、秀ちゃんがメール回してっていったときに打ち明けようとしたんだけど、なかなかタイミングつかめなくて。』
そっか、と気の毒そうな声でぼそりと呟いた。
『私も言いたいことあるんだけど、いい?』
『ああ、全然良いよ。』
息を吸った美咲は、あることについて話し始めた。
『実はね、昔一度秀ちゃんに会ったことあるんだ。』
『え?昔って?』
『中学校の頃。』
『中学校?どうやって会ったの?』
『たぶん、秀ちゃんも私のこと知ってると思うんだ。』
その言葉におかしいと初めて思った。そして、そこから段々と謎が深まっていった。
『たぶん、これ言ったら思い出してくれるかな。』
『え、何だよ、言ってくれよ。』
じらすようにして美咲はなかなか言ってくれない。しかし、しびれを切らした秀次に、とうとう彼女は言った。
『じゃあ、言うよ。憶えてるかなー?貴方と私は永遠に結ばれる運命にあるのよ。』
『え?』
何を言ってるんだと耳を疑った。
『何冗談言ってんだよ。こないだの美由紀のことは良いから、早く言ってくれよ。』
笑いながら言ったのに、美咲は一つも笑ってなんかいない。


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