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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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伊藤美弥の悩み 〜初恋〜-7

さて、翌朝。
 たっぷり泣いてたっぷり疲労してたっぷり睡眠を摂った美弥は、いつも通りに目を覚ます。
 寝入る前に激しく泣きじゃくったが、その割に瞼はさっぱりしていた。
 目の前に、龍之介の顔がある。
 美弥は寝ぼけ眼で無意識のうちに手を伸ばし、龍之介の頬に触れた。
 どうやら最近剃ったばかりらしく、龍之介の頬はつるつるしていて手の平にヒゲが刺さらない。

 さすさすさす……

 寝ぼけから覚めないままに、美弥は何度も頬を撫でてみる。
「ん……」
 眠る龍之介はくすぐったそうに呻き、手を伸ばして美弥の頭を撫でてきた。
「ん〜……」
 ようやく目の覚めてきた美弥は、手を止めて大きく伸びをする。
 低血圧という訳ではないのだが、美弥はやや寝起きが悪い。
 自分で起きても他人に起こされても、最低でも十分は布団から離れられないのだ。
 しかも寝ぼけてもそもそしている間の行動を全く覚えていないのだから、始末が悪い。
「りゅう、おはよ」
 少し目の覚めた美弥は声をかけたが、龍之介は美弥の頭を撫でつつ寝息を立てている。
 なかなか器用な技だ。
「りゅーう……」
 軽く体を揺さぶると、龍之介は一声呻いて寝相を変える。
 美弥を抱き寄せ、ぎっちり抱き締めたのだ。
「んゃ……!」
 意識が夢の世界に遊んでいるせいか、抱き締め方がかなりきつい。
 美弥は眉をしかめ、嫌がり、体をよじる。
 しかしそれは、龍之介の力の前には無意味な抵抗でしかなかった。
 体を鍛えているせいもあるのか、龍之介が本気になったら美弥程度の筋力では抗いようがないのである。
「う〜……」
 一声呻いた美弥は、一計を案じた。

 ちゅ……

 苦しいのを堪え、まずは唇にキスをする。

 むにっ

 次は手を伸ばして龍之介の鼻をつまみ、呼吸を止めてしまった。
「……っ」
 寝ていてもキスされたのが分かるのか、龍之介の目尻がでろりと下がる。
 しばらくして目尻が元に戻り、眉間に皺が寄り始めた。
 呼吸は、まだ止められている。
「……!?」
 ようやく、呼吸ができない事に気が付いたのだろうか。
 龍之介の手が、供給されなくなった酸素を求めてばたばたと動き始める。
 苦しさの原因を探り当てようとして、龍之介はようやく目を開けた。
「おはよう」
 目を開ける直前に手を離した美弥は、唇を離してにっこり笑う。
「あ……おはよう」
 朝一番に輝くような笑顔を見せられ、龍之介はしどろもどろに挨拶した。
 輝くような笑顔、とはあくまでも龍之介の主観である。念のため。
「珍しいね。美弥が先に起きるなんて」
 寝起きのいい龍之介は早くも意識がしっかりしているようで、むっくり起き上がった。
 龍之介を起こしたもののまだ半分以上眠っているような状態の美弥は、ふにゃっと笑ってベッドに突っ伏す。
「ん〜、そうだね〜……」
 言って美弥は欠伸をし、目を閉じてしまった。
 放っておいたら二度寝に突入しそうな様子の美弥を、龍之介は抱き起こす。
「学校休みたいの?」
「ん〜……」
 目をしょぼしょぼさせている美弥の頭を、龍之介は小突いた。
 美弥当人の目が覚めないのでは、いくら龍之介が起こしても徒労にしかならない。
「眠い〜……」
 そう言った美弥は龍之介に体を預けると、意識をしゃっきりさせるように頭を何度か振る。
「ん……」

 すぴ〜……

「……ヲイ。」
 龍之介に体をもたれさせたまま二度寝に突入してしまった美弥に、龍之介は思い切りツッこんだ。
「寝るなよ……」

 すか〜、く〜……

 いかにも安らかな寝息を立てつつ睡眠を貪り始めた美弥を、龍之介はやや乱暴に揺さぶる。
「みーや。起きて」
「んゃ……」
「ほれ起きろ〜」
 龍之介は揺さぶりを続けつつ、美弥の背中を爪先で引っ掻くように撫でた。
 いつもなら、肉体への刺激が多少なりとも効果があるのだが……。
「んぁん……」
 何とも言えない色っぽい声を、美弥が出す。
 不意に龍之介は、自分がとんでもなく危ない状況へ曝されているのに気が付いた。
 こうして無防備な美弥を抱いているのでさえ危ないのに、起こすためにこんな声を聞かされ続ければ、それ程しないうちに理性がキレてしまう。
 そして今の状況は、心身共に極めて危ない。
 とりあえず美弥をベッドに下ろし、龍之介は深呼吸をした。


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