傷痕は誓いの枷〜傷痕side chika〜-2
「待っ、て!やだ…っ」
「だめ。お仕置き」
それだけを言って口の中を蹂躙される。
歯をなぞられ、歯茎をくすぐられ、舌を吸い、唾液は飲み込まれるし、飲まされる。
これからされることに羞恥を煽られないわけない。
できるなら避けたいし、なんでなんでと憤りだって感じる。
でも私は絶対に許してしまう。
流くんが、そんな目をするのが、悪い。
口づけられながら背を、背の傷痕を服越しに何度か撫でられ、軽く引っ掛かれれば、背をはい上がる快感は強く性急で……あっけなく私は達した。
出るはずだった叫びは全部流くんが呑み込んでしまう。
代わりに流くんの味を流し込まれて。
「すっかり性感帯になったね」
しなだれかかるようにすがるしかできない私に言いながら、流くんは満足げに笑う。
目だけは捨てられる前みたいに怯えきって、笑ってる。
流くん。
逃げないから、私は絶対逃げないから。
なんで…信じてくれないの?
なんで……そんなに辛そうな顔をするの?
なんで………それなのに笑うの?
こんな醜い傷痕をもつ私を背負ったことを悔やむなら、手放していいから。
たまに流くんの執着や独占欲は強すぎて、自己暗示をしていんじゃないかって思う。
ムリ…してるんじゃ、ないかな。
ずっと聞きたくて言えなかった。
でも、…流くんから別れを切り出してくれるなら諦められるから。
でも私からは言わない。……言えない。
傷痕に触れられるだけで達せられるほど、侵食されて快感を覚え込まされたって、離れたくない。
こんな傷痕を抱えてる私を、それでも抱いてくれる人なんて、いまさら見つけられない。
唯一の好きな人。
なのに私のせいでたくさん傷つけてしまう。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
こんな醜い傷痕を残した私を、ゆるして。
達したばかりで荒い息の中、すがるようにしがみつきながら、少し泣いた。
傷痕は、本当に気にしてないの。
ただ……傷痕一つで変わってしまった関係が私の心を蝕む。
ねえ。
傷がなくても、痕がなくても……私を側に選んでくれた?
もうすぐ、期限が迫ってる。
はやく、はやく。
もう私は、別れを待っているのか永遠を待っているのか…わからない。
式の日が、永遠を誓う日が近づいている。