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エッグスタンド〜One party〜
【幼馴染 恋愛小説】

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エッグスタンド〜a person's〜-1

 白く華奢な手首に浮いた数多く付けられた赤い傷跡。その中ほど、血が流れる新たな傷に消毒液を湿らせたコットンを当てがう。

 コイツは、いつの頃からか半袖を身に着なくなった。
 沙那は、治療されている自分の傷口をジッと見つめている。

「そんなにしなくても大丈夫だって」
「前も言ったよな?最初の処置が肝心だって」

 消毒し終えた患部に、傷を覆うくらい大きめの絆創膏を貼って包帯を巻きつける。
 長袖シャツについた赤い滲みは、すでに乾き始めて茶色く変わってきた。

 包帯をテープで固定し終えたオレは、わざとらしくため息を吐いた。
 沙那は、気にした様子もなく笑みのまま、

「ん〜…どうしたの?怖い顔して」
「どうじゃねえよ…」
「だから言ったじゃない。痛くないからって…」

 嘘を繰り返す。何度も聞かされたが相変わらず頭にくる。

「オマエなあ、見てるコッチが痛々しんだよ!」

 強い口調で返すが、コイツに堪えていないのは分かってる。

「だったら、見なけりゃいいじゃん」
「その傷口を、見ないで治療をやれっつうのか?」
「治療しなけりゃいいじゃん」
「自分じゃ治療しないクセに…」

 コイツは、自分の身体を傷付けることには異常な執着を見せるが、その傷に対してはひどくぞんざいだ。
 傷を放ったらかして、化膿し掛けたことも1度や2度じゃない。

「化膿させたらどうするんだ?」
「そのまま、腐って死ぬのも悪くないよね…」

 …ああ、イライラする。コイツは、どこまで自虐的なんだ。

「ねえ薫…」
「なんだ?」
「タマゴは何故、不安定なんだろうね?」

 …また同じ質問。コイツは何を言いたいのか…

「ねえ?」
「知らねえよ。逆に、不安定じゃ何がマズいんだ?」
「不思議じゃない。自分の子供が中に居るのに、カタチは割れ易くて不安定なんて…私ならそんな事しない」

 私ならそんな事しない。自分が親ならタマゴを産まない。タマゴにしない。

 …なるほど……

「私ならタマゴにしないってことは、自分は、将来を見据えてるって事だな?」

 沙那は、途端に目を丸くして焦った口調で弁解しだす。

「違うよ!私はただ、自分がそう思っただけで…」
「オマエが将来、子供を授かったら絶対にタマゴにしないと?」
「だから、これは言葉のアヤで…」

 なるほどな。コイツの感情混じりの言葉、久しぶりに聞いた。
 オレは深く息を吐き出し、沙那を見据えて訊ねた。

「オマエは実の親に、自分がタマゴになり、感情を隠さねばならない事を受けたんだな…」

 顔色が変わった。


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