今宵、月と女-1
今宵は十五夜。かぐや姫なら月の都へ帰るだろうが、私は帰るとこなどない。
「綺麗…」
澄んだ夜空に青白い艶しい輝きはよく映える。
見ていられなくなった私は足元を見て歩いた。もう終電もない。夜の街からタクシーを拾える道に出るまでの道のりはどうしてこうも長いのか。
「やばい…」
くそう。泣かないって、あの日からきめていたのに。
自分で望んだ関係。
でもその関係は、まだ若い私にはあまりにも切なく、また辛いもので。
でも、断ち切るほどの強さも気持ちもない。
私は溢れる涙を握り拳で拭きさった。そして、前を向いて歩き出した。
もう、私には体しかないのかな?
誰か、教えて。