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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VC-9

 8番は淳に代わってセンターを守る3年生の加賀だ。昨年は試合経験が無く、今年からレギュラー枠25人に加わったひとりだ。

 キャッチャーは加賀の足の位置を確認してからサインを出した。ピッチャーはサインに軽く頷き、ランナーの稲森に注意しながらホームへ投げた。

「ストライク・ワン!」

 初球は緩い外角へのカーブ。主審の右手が上がった。
 2球目は縦のスライダー。加賀は付いていけずに空振りする。

「クソッ!」

 加賀は一旦、打席を外して2度、素振りをしてから打席に入り直した。足の位置を、わずかにベース寄りに変えた。
 キャッチャーが、それを見て3球目のサインを出すと、ピッチャーは頷いてセットポジションを取った。

(さあ、こい…)

 バットを握る手に力が入る。ピッチャーは長い静止から一転、クイックモーションで投げ込んだ。

(!!)

 内角低めへのストレートがキャッチャーミットを鳴らした。加賀は、固まったように動けなかった。

「ストライク・スリー!」

 ピッチャーは小さくガッツポーズをすると、颯爽と3塁ベンチへと駆けて行く。
 加賀は、うなだれてヘルメットを脱いだ。

「惜しかったですね」

 2年生の和田が加賀のグラブを持って駆け寄った。

「完全に裏をかかれた…」

 バットにヘルメット、手袋を和田に渡しながら、加賀は悔しそうな顔だ。

「次は打てますよ。頑張って下さい!」

 和田はグラブを渡すと、そう言ってベンチに戻って行った。

(ここでアピールしなきゃダメなんだ…)

 初めて選ばれたレギュラー枠。しかし、夏の大会ではさらに17〜18人に絞り込む。
 最期の大会は何としても出たい加賀には、アピールしてレギュラー枠に残る必要があった。

 加賀は悔しさを胸に、守備位置へと駆けて行った。


 その後、立ち直った東邦のピッチャーは3回を3者凡退に抑える。
 一方の淳は2回にヒット2本打たれるが、点を与えずに後続を斬ると、3回からはキャッチャー達也がストレート主体へとリードを変え、2三振を含む3人で終わらせた。

「ここまで51球。打順は3番から。この回が勝負どころだ」

 永井は、円陣を作る選手達にそう言ってゲキを飛ばす。

「この回から“好球必打”だ。積極的に打っていけ!」
「ハイッ!!」

 円陣が解かれ、淳はネクスト・サークルで投球練習に合わせてタイミングを測る。


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