やっぱすっきゃねん!VC-5
「整列!!すぐにアップに入るぞ」
青葉中学は、東邦中学に到着すると次々とグランドに集まった。
永井は後を葛城と一哉に任せ、東邦中学が集まっている場所に走って行った。
「準備運動やったらランニングやるぞ!」
達也を先頭にして部員達がアップを始めた。
いつもより少ない4キロのランニング。その後にストレッチにキャッチボール、シート打撃。最後に塁間ダッシュを10本。
試合までの短い時間に、次々とアップをこなしていく。そんな中、ペッパー・バッティングと塁間ダッシュで、佳代は秀出していた。
シート打撃ではライナー性の強い打球を弾き返し、塁間ダッシュも部員の中でダントツと思えるほどの速さを見せた。
(…使ってみるか……)
部員の中で光る動きを見せる佳代を見た永井は、試合で使ってみたくなった。
11時前。メンバー発表に部員がベンチ前に集まる。
「…1番サード乾…2番レフト足立…3番ピッチャー淳…」
永井が読み上げる中、部員達に緊迫感が浮かび上がる。
「続いて控えだが…セカンド兼ファーストに和田…ショート兼サードに市川……」
2、3年生で、レギュラーとボーダーラインの部員達は名前が呼ばれるのを今かと待っている。
「…それから、ライトの佳代」
「エッ?私」
てっきり記録員だと思っていた佳代は、選手枠に入って驚いた。
(姉ちゃん、やるじゃん)
弟の修は、以外な発表に喜んでいた。
「プレイボール!」
主審の右手が上がり、第1試合が始まった。先攻は青葉中学。1番乾は打席から2番足立はネクスト・サークルから、初対戦するピッチャーを見つめている。
ひと回りまでは球筋を見極め、それ以降は好球必打を掲げた青葉ナイン。しかし、乾も足立も2球目と4球目を打って凡打に終わった。
そして、3番に淳を迎える。
(強く…小さく振るんだ)
その3球目。外角低めを叩くと、打球はライト線際に落ちた。淳は必死に1塁を蹴る。
ライトからセカンドに返球されるが余裕の2塁打となった。
(2アウト2塁。何とか先制して勢いをつけたいな…)
4番達也が打席で構えた。後ろの軸足に重心を残し、体重はつま先に掛ける。変化球にも対応できるスタンス。
達也は5球目の内角高めを打ちにいった。が、ボールは途中から低めに沈んだ。
(くっ!)
達也はなんとか対応したが、打球はショート正面だった。