『LIFE LINE』後編-24
エピローグ
そして僕は、目を開けた。
長い、長い夢を見ていた。
季節が通り過ぎ、秋風が吹き抜けた。厳しい冬を越え、いつしか春の芽が顔を出す頃になっていた。
そう。
あれから少しばかりの時間が立ち、僕は今ここにいるのだ。
3月の初頭、無事に卒業を迎えることができ、着の身着のままとある場所に向かい、そこで人を待っていた。
進学を諦めてたと、周りの人に報告した時、予想以上の反発を受けた。
考えてみれば当然のことで、もし僕が僕でなかったら、コイツはただの負け組なのだと鼻で笑っていたのだと思う。
その話をして、唯一笑わなかった人がいた。
複雑な表情をしながらも、気持ちを汲んでくれたのだろう。
持ち前のしかめっ面を和らげて、
「圭一が決めたことなら」
と了承してくれた。
「まあ、やれるだけやってみなさい」
って感じだ。
一番喜んでくれたのは明菜だった。
ツブシのきかない道に迷い込む兄貴を尻目に、
「私もそっち系の学校に進もうかなぁ」
なんて事を言っている。
可愛い妹にそんな真似をさせる訳にはいかない。
全力で阻止しようと思う。
逆に、ハニワ屋の主人には悪いことをした。
僕のことを弟子同然のように思っていたらしく、しょぼんとした様子でうなだれていたが、同時に励ましの言葉をもらった。まあ、あの調子ならあと二十年は健在だろう。
一番心配だったマコも、今春から立派な女子大生になる。
ウチの学校で、今年一番の健闘を見せたのはおそらく彼女だろう。
子ども達に好かれるような保育士になってくれるかどうかは謎だが、
「受かっちゃえばこっちのもんよね」
と言いながら毎週コンパにいそしむつもりらしい。
次に会うときが見ものだった。
そして僕は、ここにいる。
窓の向こうに流れる景色を見るともなしに眺めていた。
起きたばかりの混濁した頭の中で考えていたのは、あの夏のこと。
様々な記憶を、移り変わる景色の中に思い返していた。