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『LIFE LINE』
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『LIFE LINE』後編-20

分からない。
分からない、けど……。

これだけは、確実に言える。


時代遅れの古臭いバッシュも、僕の体がもう、完璧に怠ってるんだってことも。
何もかも遅すぎなんだよ、バカ親父め……。


このまま引き下がるなんて、願い下げだ。

先生に暴力を振るい続けるあの男を、僕は許せない。
たとえそれが、被害者が起訴を申し立てなくても、もう僕は見てしまった。

泣きながら謝る先生の姿が、
名前を出しただけで怯えてしまう先生の姿が、今でも脳裏にチラついて頭から離れない。

そして、それを見た時から腹の底は決まっていたのに。
僕が全てを懸けようとしたその瞬間に、先生は僕と世界を拒絶した。
彼女が選んだのは、身も心もズタズタにされていく狂った世界だった。

どうして、とは踏み込めなかった。

それ以上追求して、今の関係が壊れることが僕には怖かったし、何より相手が悪すぎた。
僕が培ってきた自信や経験なんて、これっぽっちも役に立ちそうになかった。

ハニワ屋の言うとおりだ。
何の後ろ盾もない、ましてや社会的に何の力もない学生の僕になにが出来る?
せいぜい強がって、口先だけの遠吠えを吐くのが関の山だ。
そんな事をしたところで、状況なんて何一つ変わりはしないだろう。


……だけどね、父さん。

僕は、諦めないコトを決めたよ。
自分が何をしたいのか、ようやく気付いたんだ。

…先生のことが、好きなんだ。
初めて会った時から、ずっと好きだった。
だから、この夏で終わりだなんて言わせない。
これからも側にいてほしい。見守っていてほしい。


僕は確かに、まだ子供だし、どうしようもないくらいガキだ。だけど、それももう、今日で終わりにする。

僕は、18になった。

これからは、自分の力だけで、先生を守っていく。


一人の……男として。




「今日は皆さんに、報告があります」

教壇の上から、凛とした声が響く。
夏期講習の最後の授業で、生徒の数はまばらだったが、その人は気にする様子もなく静かにそこに立っていた。
僕達は長い受験ロードをひた走り、ようやく終わったこの夏に、安堵していたり、寂しさを感じたりしていたが、先生の声に目を覚ましたように姿勢を正していた。

「今日でこの講習も終わりです。ですから、私の仕事も今日限りで終了ということになります。短い間でしたが、お世話になりました」

深々と頭を下げてから、先生は僕達を一人一人確かめるように見渡した。
それほど人数がいたわけではなかったが、先生はまるで出席を取っているかのように、時間をかけて、僕ら生徒の顔を見回した。


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