『LIFE LINE』後編-15
蛍光の消えた灰色の天井を眺める。
大きく息を吸って、眼を閉じた。
――何の為に勉強してるのか、と言った先生の言葉を僕は思った。
――やってみたいことはある?と言った先生の言葉を僕は思った。
――白いキャンパスのように、君にはまだ可能性がある、と言った先生の言葉を僕は思った。
…この可能性は、ないような気がした。
たった一度のブランクで、音を上げてしまうのだから。
目を開き、起き上がる。
拭いきれない漠然とした不安は、全身を満たす疲労感と共に、いつまでも僕の中に残っていた。
夕方になって、今日の宿をどうしようか路頭に迷った。
真っ直ぐ家に帰りたくなくて、でもどうしたらいいか分からなくて、当てもなくぶらぶらしていたら、いつの間にか駅前の交差点まで来ていた。
足が止まる。
電車の音が聞こえる。
反対側のホームだ。
走れば間に合う。
でも、足が止まる。
そんなことを10分くらい繰り返して、その場で立ち往生していた僕に後ろから声がかかる。
学校帰りのマコが怪訝そうな顔でこちらを見ていた。
「なんだ、今帰りか?」
「午後からピアノのレッスンがあってね、さっき終わったとこ」
そう言って、マコは両手で鍵盤を叩く仕草をしてみせた。
意外にも様になっている。
「ピアノ?お前が?」
「保育士志望だから、そういうのも必修になってくるのよ。
あんたは何してたの?」
「バスケ」
僕が正直に答えるとマコは、はあ、何やってんの?って顔をした。
当然の反応だった。
「それも余裕?まったく、羨ましい話ね」
肩を透かしてため息をつくと、僕の袖を引っ張って、言った。
「まあ、いいや。帰るわよ」
「ち、ちょっと待て。僕はまだ……」
「何?まだどっか寄ってくの?」
マコは切れ長の目を寄せて不審そうにじっと僕を見た。
これ以上追及されたら、きっと言い逃れできないだろう。
仕方なく僕は足元に込めていた力を、スッと緩めた。