僕が殺ったんだ-1
自分の恋人を殺したのに、無罪になった男のお話。
『恋人を殺した』と自首してきた男が居た。
警察は取り調べに取り調べを重ね、結果彼を罪に咎めなかった。
ただ精神的にだいぶダメージを受けていたため、入院させざるを得なかった。
--その男の証言--
僕はあの方と一緒に暮らしていた。
街角の店先にあの方は居たんだ。
運命的な出会いだった。
一目で惚れ込み、ついに想いは届いて、僕たちは恋人になった。
いつでも寄り添いあい、キスをして、抱き締め合って抱き合って。
素晴らしい日々だったんだ。
とても輝いていた日々だった。
『愛してる』と僕が囁けば、あの方も『愛してる』と囁いてくれる。
とても綺麗で美しく、どこか儚げな方だ。
僕はあの方とたった一つ、やったことないことがあった。
散歩だ。
二人で手を繋いで散歩して、僕の恋人をみんなに自慢したかった。
けれど、あの方は極度に外を嫌がる。
いつもその瞳には寂しげに外の世界が映し出されているというのに。
『部屋にいたいの』
あの方は言う。
そこで僕は考えたんだ!
きっとあの方が外を拒むのは、自分の見た目に自信がないからなんだと!
実際は自信を無くすようなもんじゃない。
むしろ自信を持って良いぐらいだ。
実は部屋には鏡がなかった。
だから僕は仕事にいく振りをして、鏡を購入しにいった。
あの方と出会った店先に、それはそれはあの方にとても良く似合う姿見が売っていたんだ。
僕は『これだ!』と思い、即購入した。
帰ってきて鏡をあの方の前に置いて、その顔を覗き込んだ。
きっと喜んでくれる、そう思っていた。
けれど、ぎょっとした!
あの方は他の男を連れ込んでたんだ!
卑怯にもそいつはあの方の後ろに隠れて、後ろを向いていた。
あの方は『どうして…』て言った。
『仕事に行く』と告げて出たのだから、帰宅が早すぎてビックリしたみたいだ。
でもそれはこっちのセリフだよ!
『どうして!?』
なんで、そんな男なんか連れ込んでるんだ!
憎い
憎い
憎い
ころしてやる