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父ちゃんの背中
【熟女/人妻 官能小説】

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父ちゃんの背中-3

「真ちゃん、お父ちゃん雑炊作ってくれたから、冷めないうちに起きなさい」
多恵子が呼ぶ声がきこえたが、真治は今朝の光景が頭から離れず
「いらない」
素っ気なく言い、走って家を出た。背後から
「夕御飯はおかあちゃんが作るから、早く帰ってくるんよ」
と小さく声がした。
皆の家はどうなのかと、友達にきいてみたくとも、優しくて清らかな母ちゃんのイメージは壊したくない。
走って、走って、どんどんスピードをあげても、父の大きい背中と浅黒い一物、それに突かれる母の苦しそうな、悲しそうな顔が浮かんでくる。
父親の汚いものを見た気がした。心からどんどん黒く、黒く、闇が広がっていくような気がした。学校へ行く気にはならず、小川沿いを歩いて山のほうまで行き、夕方まで時間をつぶした。
落ちていた栗のイガを足でよけ、虫食いでないことを確認してポケットに入れた。小学生の時、多恵子がよく栗御飯を作ってくれたことを思い出したからだ。



家に帰ると、美味しそうな御飯と、戸惑った顔の直治がいた。
「母ちゃん、夕飯作った後、急に具合悪くなった。真治、会ってこい」
俺はもういいから…と言い、後ろをむき、涙をこらえるために顔を上げた。
今朝のことは忘れて、真治は慌てて多恵子の部屋に行くと、ポケットの中の栗がゴリゴリ音をたてた。
「栗御飯作れなくてごめんね」
「父ちゃん、一人じゃだめな人だから、真ちゃんよろしくね?母ちゃんのかわりに御飯作ってあげて」
多恵子は微笑んで、目を閉じた。"末期癌の患者が痛みを感じずに天国に行けることは奇蹟なんだよ"
そう言われても真治には何の救いにもならない。
"父ちゃんが母ちゃんにひどいことをしたから、母ちゃんは死んだんだ。"
中学一年生の真治はそう思った。

結局、栗は母ちゃんの棺の中に入れることにした。



六年が立ち、真治は気付いた。
"あの日父ちゃんに愛されて、母ちゃんは幸せだったんだ"と。
だから、今夜は父ちゃんが仕事に行く前に、栗御飯でも食わしてやるかな。


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