春に囀ずる-2
ハルのバカ。
手くらいだして。
男だろ。
まだ待っていられる内に、……ハルのものにして。
気持ちと体がバランスとれない。
………年上なのに、年下のオトコノコに『抱いて欲しい』『アナタでイッパイにして』『私のこと欲しがって』なんて言えない。
だから手くらいだして。
男になれないくらい、私…魅力ない?
女には、思えない?
「はる…ぅう〜〜っ」
熱くなった体は急にさめて、たださみしい。
どうしてくれんのよ、ハルのバカ。
みた瞬間、ヘンに納得。それでもやっぱりショックだった。
そんな気持ち。
………同い年くらいの女の子と歩くハル。
ありふれた景色、予想できてた光景なのに、いざ目の当たりにすると驚くほど胸に痛い。
カジュアルにくずした格好は私の隣じゃみれない。
笑いながら肩バシバシ叩くなんて私はできない。
あんなイタズラっ子みたいに幼く笑うハルを、私は知らない。
笑いあって…なんか耳打ちしてるのがキスしてる、みたいに――みえてしまう
やんなるなぁ…もぉ
そう思った瞬間には、指が勝手にハルを着拒否にしてた。
たまに会うのだって、連絡決めは全部携帯。
決まった約束はない。
強いて言えば約束はその都度。
だったら次の約束をしなければいい。
ハルは、私とは…無理してたかな…いやだったかな
ハルの名前を携帯から消せなかったのは、私がハルを好きな未練だ。
自然消滅を図ったのは、ハルの口から私はいらないなんて、聞きたくなかったからだ。
好きな人は、思い出ではヤサシク私だけを好きでいてほしい。
たくさん愛されてた、じれったいほど大切にされていた。
ヤサシイばかりのプラトニックな恋だった。
それからは、もう仕事ばっかりいれまくって……それでも空く時間が恨めしい。
定時なんて今はいらない。
ハルを忘れさせてくれるなら、残業手当なくたって残業したい。
定時なんて思いやり、今は全然ありがたくなんてない。
ハァーッ……
部屋のドアに鍵を指す手が捕まれて、体がビクンッと跳ねた。
ため息で緩んでた心臓がバックンバックンうるさい。
叫ばずにいられたのは、たぶん。
……それがハルの手だからだ。