二個目の苺〜アーモンドクッキー〜-8
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僕は…何をしてるんだ…
普段は飲まないが、今日はつい酒に手が伸びる
つまらない…何も
…なんで、あんな風にしてみたくなったのだろう…
何杯喉に流し込んでも、酔いは襲って来ない
むしろ、頭はますます冴えてくる様だ
ブランデーをグラスに注いだ時の香りも、いつもより薄く、味の付いた水でも飲んでいるようだった
大きく息をついたとき…電話が鳴った
…珍しいな
取る気がないので無視していたが、あまりにもしつこく鳴り続けるので、舌打ちをして受話器を持ち上げた
「誰だ…?」
『愁?私よ、久しぶりね』
…声を聞いただけで気分が悪くなる
「…アンタもしつこいな、切るぞ」
『待って!話があるのよ』
「どんな話か容易に想像出来るよ…大体、よく平気でここに掛けて来られるな、その太い神経だけは褒められるよ」
『お願い、怒らないで…手紙、読んでくれた?』
すぐに、紫に彩られた気味の悪い香水の香りを、思い出す
…ラベンダーの封筒
「妙な匂いの付いた物を送って来るな…反吐が出る」
『やっぱり、読んでくれたのね』
「読むわけないだろ、破って捨てたよ」
『愁は、相変わらず冷たいわね…』
お前が言うんじゃねぇよ…
笑わせてくれるな
「どうせ金の話だろ」
吐き捨てる様に言うと、電話の向こう側で嬉しそうに笑う
『言う前に分かってくれて良かった。やっぱりこういう話しって言いづらいじゃない?』
「…ふざけるな」
『え?何?ねぇ愁、今からちょっと出て来られない?そっちの家にいるなら近いでしょ…?』
妙な猫撫で声に苛々する
「自分の息子にまで色目を使ってどうするんだ?節操ないな」
『…息子だって、思ってくれてるの?』
探るような声に、顔がかっと熱くなる
「…思ってねぇよ…アンタの血なんか、今すぐ全部抜いてやるよ!」
電話を、叩き付けるように切る