二個目の苺〜アーモンドクッキー〜-4
「確認するから先に歩いていてくれるかな」
「あ、はい」
愁さんの言葉に従い、玄関に向かって歩いていく
私は愁さんのことをあまり知らないけど…
…今日の愁さんは、やっぱりなんだか変…
何気なく振り返ると、愁さんが薄紫色の封筒を持って立っていた
愁さん…?
「…っぁ…!」
愁さんは持っていた封筒を何の迷いもなく破り、握り締めた
私はすぐに前に向き直り、歩き始めた
愁さんは私に、先に歩いていてと言った
愁さんは、先に行っててと言った
それだけしか考えなかった
考えてはいけない気がした
あの、冷たい表情…
愁さん…?
***
こんなもの一つに目くじら立てるなんて、どうかしてるな…
いまいましいラベンダーの封筒をゴミ箱にほうった
もうとっくに終わった事だ
僕は、取って置きの紅茶をいれて部屋に持って行った
「待たせてごめんね」
「あ、いえ突然来たのにすみません」
奈々は緊張した面持ちで僕を見た
その瞳はいつも僕を真っすぐ見つめている
どこか怯えて、怖がりながら、僕を信じている
僕は彼女がなんだかひどく哀れになった
「奈々」
じっと彼女の目を見る
奈々は驚いたように目を開いて僕を見る
僕が尚も見つめると、徐々に顔が赤く染まる
どうすれば君が喜ぶかなんて、僕には全て分かっているよ
僕のこんな安っぽい行為で、簡単に君の心は動く
可哀想に…
なんて可哀想な、僕の天使
「愁さん…?」
僕はにっこりと笑って見せて、彼女に近づく
「奈々、可愛いよ」
耳元で吐息混じりに囁いて、唇を重ねる
奈々は嬉しそうに目を閉じる
こんな偽者のキスを望んでいるんだろう?
嘘をつくと君は喜ぶんだろう…?