投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ボールペン
【ホラー その他小説】

ボールペンの最初へ ボールペン 1 ボールペン 3 ボールペンの最後へ

ボールペン-2




次の日、幸二は昨日のペンを持って出かけた。そして、職場に着いてからはうきうきしまくって、雅也ばかり気にしていた。雅也もそれに気付いたのか
『何だよ、さっきから気持ち悪ぃな。』
と言っていた。
『嫌何も。』
と、意味深な顔をしながら二時半の時を待った。そして、二時半5秒前、4、3、2、1
『あいっつ!』
ドタン、と音をたて、雅也はこけた。ちょうどトイレから帰ってきた時に、椅子につまづいてこけたのだった。幸二はこの一瞬で確信した。あのペンの正体を。
普通、もうちょっと偶然かもとか言って、何回かチャレンジするもんだが、幸二は違った。幸二は、この瞬間から無敵になった気がしていた。
そのすぐ後、幸二はしょうもないことにこれを使い始めた。〔京子ちゃんのスカートがめくれる〕と書いて、京子ちゃんがこけてホントに見れて大興奮。〔部長に褒められる〕と書いて仕事が成功し、部長に褒められた。幸二は止めることなくその能力を使いまくっていた。
何もかもうまくいく。怖いものは何もない。そう思いこんで、幾度となく良い方向に持っていこうと書きまくった。当然全てがうまくいった。彼女もできた。昇格できた。給料も上がった。でも、まだ何か足りない。幸二は嫌いな人間が山ほどいた。嫌な上司に逆らう後輩。ライバルの山本。そして、幸二はいつしかその能力で人を殺すようになっていた。
自分の気に入らない者は消す。自分は神だとも思いこんでいたのだろうか。殺して殺して殺し続け、その数は1週間で200人を超えた。幸二は明らかに調子に乗りすぎていた。
そんなとき、一本の電話がかかってきた。
『幸二?大丈夫?不自由なく暮らしてる?』
お世話好きの母親からの電話だ。
『大丈夫だよ。何もない。』
不自由など無い、むしろ自由すぎる。
『仕事で無理してない?体大丈夫?』
『大丈夫だって!』
つい怒鳴ってしまった。自分を気遣ってくれているだけだと知っていても、しつこいお袋にいらいらしていた。
『幸二がいいならいいのよ。』
幸二の母親は悲しそうに言った。
幸二は母親との電話を切ったあと、一人落ち込んでいた。俺は何やってるんだ、人を殺して自由に生きているだけじゃないか。幸二は真剣に考え直し、あのペンを再び持った。そして、今度はどうにか殺した人たちを生き返らせれないかと書こうとした。しかし、この世にあり得ない事は書いても実現はしない。そう分かっていても、何かしたかった。幸二なりに。
すると、今までは黒い線を描いていたペンが、赤い線を描き始めた。インクは相変わらず黒い。何故赤いか分からない。でも、インクと言うより、血のようなどろどろとした赤だった。そして、それはやがてどろどろ流れ出はじめた。どんどんインクが流れてくる。焦っている幸二の腕は、急に動き始めた。動かすつもりはなくても勝手に動く。止められない。その手は、何かを書き始めた。


エピローグ


血で濡れた幸二の腕。その腕の下にある紙。そこには血で書かれていた。

〔一分後坂本幸二死亡〕


ボールペンの最初へ ボールペン 1 ボールペン 3 ボールペンの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前