崩壊〜出会い〜-6
「残念ながらソレは無理なの」
「…?それ、何故ですか」
「先刻も言ったとおり、これらは医療器具なの。アナタのような素人が取扱うことはダメなのよ」
(…クソ…もとはと言えば、あのババアのせいだ)
仁志は奥歯を噛んで後悔した。
さらに涼子が追い打ちを掛ける。
「もしかして仁志くん、怖いの?」
そう言って自分を覗き込む涼子の目が、嘲り笑っているように仁志には思えた。
「だ、誰が怖いなんて言ったよ!」
頭に血が昇った仁志は、立ち上がるとズボンのベルトを外し始めた。まさに思うツボだ。
涼子も合わせたように樹脂製の薄い手袋を着けた。
「そこに、ヒザを軽く曲げて横向きに寝て」
下だけ下着姿になった仁志は、憮然とした顔で指差す先のソファに横になった。涼子は、ディスポーサブルを手に足元に腰掛ける。
「浣直したら、30数えてトイレで出してくるのよ」
「どうぞ」
涼子の手が、下着を一気に引き下げた。一瞬、声が出そうになったが、弱気なところを見せたくない仁志は平静を装った。
「行くわよ。力を抜いてね」
涼子は仁志の尻肉を掴んで広げる。若い男性の肛門が面前に現れた。
「へ〜え、仁志くんの肛門ってキレイねえ」
思わず感心した言葉を漏らす涼子。
「いいから、さっさとやれよ!」
「はい、はい」
恥ずかしさをごまかす怒りの声を、まるで子供をあやすように涼子は笑みを漏らす。
ディスポーサブルの先端が肛門に触れ、ゆっくりと中に押し込まれた。涼子の指が、じゃばら状の容器を徐々に押していく。
「…う…あ…」
お腹に異物を押し込まれる感覚。仁志は、稀有の体験に背中が震えた。
「もうすぐよ」
涼子は、150cc入りのディスポーサブルをすべて仁志の体内に押し込んだ。
「はい、終わり。30数えてね」
ディスポーサブルの先端が抜かれた。仁志は慌てて下着を元に戻し、険しい顔でゆっくりとソファを立ち上がる。
「廊下の左がトイレよ」
仁志は、ヨロヨロとリビングから廊下に向かった。その様は、まるで老人のようだ。