友達以上、恋人未満。-4
『ち…っちょっとっ!!待ちなさいよっ!!』
我に返った志保が上履きのまま慌てて里沙の肩を掴んだ。
『そんな事ッ!!!そんな事ッあんたに言われなくたって……
……分かってたよっ』
里沙の肩を掴む手に力が入る。
知りたく無かった。
認めたく無かった。
自分のしてきた事が、
想いが、
すべて“可哀相な事”になってしまう。
そんな−−−−現実。
肩を掴む志保の手が、“ぱたり”と落ちた。
『ごめんなさい』
口を開いたのは以外にも里沙だった。
不意をつかれた志保が微かに笑う。
『え?謝んの…あたしじゃ無い?謝られたら、すげぇ惨めじゃん』
『でも、あなた傷付いた顔をしてるから。だとしたら、あたしが言うべき言葉は“ごめんなさい”だわ』
里沙がすまなそうに目をふせる。
『はは…っ。なんか…、敵わないなぁ』
素直で、真っ直ぐで。
他人を想いやれる。
『今まで凌君が遊んで来た女の子達は、彼を好きでも無いのに外見が良いってだけで、ファッションアイテムとして寄って来てると思ってたから』
『あぁ…、そんな人も居たんじゃない?』
美果みたいに。
『あなたは違うみたいね。きっと凌君、喜ぶわ』
そう言って里沙がフッと笑った。その顔は凌への愛しさが溢れていた。
『その顔見れただけで、あたしもういいやっ』
『え?』
志保はスッキリとした顔をしている。
『里沙ーーッ!!!!』
廊下の向こうから空気を壊すように、バタバタと足音を立てながら凌が走ってきた。
『ちょっと里沙っ、委員会終わったら保健室に居るから起こしてって言ってたのにー』
はぁはぁと息を切らしながら凌が情けない顔をしている。
『だって面倒くさかったから』
『面倒くさいってぇ…』