友達以上、恋人未満。-3
『ってか、それマジ?』
『マジだって!!あたし凌から聞いたもん』
華やかな凌のイメージからは想像も付かない地味な存在。
『あ〜っマジ悔しい!』
美果がもう一度床を蹴りつけた。
『あーぁ、凌もあんな女に惚れるなんてつまんない男だったって事か。』
怒り狂って居た美果が急に冷めたように言った。
『ちょっと外見良いし、エッチも上手いし。遊ぶにはちょうど良かったけどね〜。じゃ、授業始まるしもう行くわ。』
言いたい事だけ言った美果は、すっきりした顔で慌ただしく自分の教室に戻って行った。
残された志保は廊下で一人複雑な顔をしている。
***−−−放課後
『あーっもうこんな時間じゃんっ』
補習で居残りさせられていた志保は、携帯を開いて時間を確認した。
時刻は16時52分。
グラウンドでクラブ活動に励む生徒以外、校内に生徒の影は見当たらない。静まり返った校舎を歩いて居ると、下足場でキレイな黒い髪が揺れた。
『どうも。石井さん…だよね?』
黒い髪の正体は“凌の彼女”石井里沙だった。
突然目の前に立ちはばかる志保に、里沙は機械的に顔を上げた。
『なにか?』
志保を真っ直ぐ見据え、短く答える。
『いや……。凌と付き合ってるって本当かなぁと思って』
『本当だけど』
里沙がさらりと認めた。
『えー。本当なんだぁっ。なんかー、全然人間の種類違うし、遊ばれてるんじゃ無いかと思って心配でぇー』
自分でも馬鹿な事を言っていると分かっていながら、志保の口は止まらない。
伝えられなかった凌への想いが、“嫌味”と言う姿に変え、いつもより饒舌に里沙へと向かう。
『あなたに心配される必要は無いわ。』
『でもー。あなたより、凌とのツキアイは長いしぃ、凌ってほら、あんなじゃん?』
『だから?』
『ヤッてから身体の相性が悪いからバイバイって捨てられる前に、忠告しときたいなぁって』
『あなたって、可哀相ね……』
短いため息を付き、心を見透かすように真っ直ぐ志保を見た。
そして黒いローファーに履き変えた里沙は、下駄箱に上履きを戻し黙って背を向けた。