やっぱすっきゃねん!VB-7
放課後。
ランニングやキャチボールなどの全体練習の後、部員達は朝練前に永井に言われたメニュー別に分かれる。
レギュラークラス25人は、各ポジションごとにグランドに広がって連係の練習を、レギュラー以外の2、3年生はファウルゾーンを使ってノックを、1年生達はグランド隅に散らばり、腕立てや四股をなどのトレーニングをこなしながら、ボール拾いを行のだ。
そんな中、佳代はひとり葛城に連れられて体育館を訪れた。
「スパイクはそこに置いてね」
佳代と葛城は、玄関横の巨大な靴置き場にスパイクを置き、体育館入口の重い引き戸をそろそろと開いた。
普段は見ないネットが四方に貼られ、バレー部とバスケット部がメインアリーナで激しい動きを見せていた。
「こっちよ」
葛城の後を付いてネット外を奥へと進んでいると、
「カヨォーー!!」
ネットの中にいた尚美から声が掛かった。
「ナオちゃん!」
尚美がネットのそばに駆けてきた。息が弾み汗が滲んでいる。
「今からやるの?」
「そう!まずはロープ登りなんだけど…」
「それなら柔道部よ。1番奥の」「…柔道部…?」
佳代は体育館の奥を見た。が、柔道着を着た生徒など見当たらない。
「2階に居るのよ」
すぐに葛城がフォローすると尚美も頷いた。
「体育の時、私達が着替えてるじゃない。あそこよ」
佳代は思い出した。そういえば、隅に畳やクッションが積み重ねてあった事を。
「じゃ、頑張って!」
尚美は、そう言うと仲間の中に戻って行った。佳代達は狭いネットの間を歩き2階へと向かった。
そこは、いつも見る場所とは異質な感じだった。十数人の柔道部員達が、快活な声の中、乱取りや受身の稽古を繰り返していた。
「先生、連れて参りました。ウチの部員の澤田佳代です」
イスに腰掛け、稽古を見守る男に葛城は頭を下げた。佳代も真似て一礼した後、男の顔を見て驚いた。
「…ま、真柴先生…」
目の前に居るのは、国語教師でクラス担任の真柴だった。
「澤田…ロープ登りをやるそうだな」
「はぁ…それより先生、柔道部の監督だったんですか?」
佳代は、不思議なモノでも見るように真柴を見つめる。
「おまえ達の担任になってからな。学生時代にちょっとかじってたんだ」
「そうなんですか…」
佳代は、ひとり納得顔をすると再び真柴に一礼した。