投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 240 やっぱすっきゃねん! 242 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VB-6

(去年から10キロも増えてる…)

 ショックを隠しきれない。怪我しての10日あまり、満足に動かないまま食べたためだった。

(シャツがパツンパツンになってるのは洗い過ぎじゃないんだ…自分が大きくなってたのか…)

 佳代自身、着ている服が窮屈だとは気づいてた。ただ、それが予想以上だったのだ。
 もちろん彼女の母親、加奈は気づいていて、シャツなどはサイズの大きいモノを買ったのだが、成長がそれを上回っていた。

 その後、徐々に運動の負荷は増えたので体重は少し落ちたが、身長はさらに伸びて169にもなった。

「そんなに食べてたら、すぐに私を抜いちゃうよ」

 尚美の優しい忠告。だが、佳代はニッコリ笑い“ありがとう心配してくれて”と言った後、言葉を返す。

「あの時はショックだったけど、最近は、もっと大きくならないかなって思ってんの」
「なんで?」
「175くらいなら男子に見劣りしないでしょ。高校でも野球やりたいからさ…」

 なんともオプティミスト(楽天家)な言葉。尚美は再び呆れ顔を見せる。

「あ、そうだ!」

 佳代は箸を休め、思い出したようにジャージのポケットに入れた紙切れを取り出した。
 それを見た尚美が訊ねる。

「何それ?」
「トレーニング・メニュー。藤野コーチが考えてくれたんだ」

 食べる時とはまた違う、嬉しそうな佳代が尚美は、ちょっと羨ましくなった。

「ちょっと見せて」

 紙切れを佳代から取り上げると、内容を読み始めた。

「ダメだよ。私もまだ見てないんだから」
「…ちょっと、アンタこれ、本当にやるの?」

 尚美の顔がみるみる強張った。佳代は不安な面持ちで訊いた。

「何が書いてあるの?」
「これ、ロープ登り×10って…他にもタイヤ引き×20とか…」「エッ!?」

 佳代は、慌てて紙切れを取り返すと自分の目で内容を確かめた。そこには、想像以上のメニューが記されていた。
 前出のメニューはもちろん、学校前に200メートルほど続く坂道をダッシュで15本、四股100回など、冬のトレーニング以上の量がびっしりとひと月分、表になっていた。

「…アンタ、こんなのやったら死んじゃうよ」

 尚美は心配げな表情で佳代を覗き込む。

「コーチが私のために考えてくれたメニューだもん。絶対にやる」
 佳代はそう言うと一転、負けん気の強い顔で大きく頷いた。

「アンタが羨ましい。そんなコーチ、私にゃ居ないもの…」
「当然よォ!なんて言っても“世界一の理解者”だもん」
「あらぁ〜」

 自慢気に言い放つ佳代を見て、尚美は本日3度目の呆れ顔を見せた。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 240 やっぱすっきゃねん! 242 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前