やっぱすっきゃねん!VB-5
昼休み。
「アンタ、相変わらず大盛りだねぇ」
給食。尚美は佳代の持つトレーの中身を見て、呆れたような声を発した。
「今日から、練習をセーブすること無くなってね。思い切りやったらお腹空いちゃって」
五目ご飯にクリームシチュー、フルーツサラダと牛乳。なんとも不思議な組み合わせの献立だが、食べ物に頓着しない佳代は牛乳以外、すべて大盛りに注いでいた。
五目ご飯をひと口食べる。ゴボウやニンジン、鶏肉にエリンギ、さやいんげんが混ざった味に、佳代の頬を緩ませる。
「いつ見ても嬉しそうに食べるねえ…」
羨ましげな尚美の声。対して佳代は食事の手を休めずに、
「だって美味しいもの。それに、ナオちゃんは食べなさ過ぎだよ」
「…だって、これ以上、身長伸びるのヤだもん」
事実、尚美のトレーに乗るひと品づつの量は、佳代の半分以下だ。
「そんな事して、倒れでもした方が危ないよ。私ら成長期なんだからさ」
「でもカヨだって、この間の身体測定で驚いてたじゃない」
それは4月初旬、佳代がまだ身体を満足に動かせない時の事だ。
毎年恒例の身体測定で身長を計った時、尚美は170センチの大台を超えて嘆いていた。
「どうしよう…これ以上大きくなったら…」
そんな尚美に、佳代と有理は声を掛ける。
「あまり気にしない方が良いよ」
「だって…私より大きいひとって…バスケット部にいないよ。バレー部の杉山さんとか、3人くらいしか居ないんじゃ…」
「ウチの野球部なんて、大きいヤツばっかりだよ。淳なんて180はあるからさ」
あまり慰めとも取れない言葉を言ってると、佳代の番になった。慌てて身長計に乗り、背筋をピンと伸ばした。
(去年が160だったから、165くらいかなぁ…)
「はい、ちょっとアゴ引いて」
白衣を着た女性の補助員が、測定器を軽く頭に当てた。
「え〜…168,5」
「エエッ!」
思わず声が出た。反応した補助員がたじろぐほどに。
「ど、どうかした?」
「あ、いえ…すいません」
佳代は補助員に頭を下げて身長計から降りた。
(そんなに伸びたのか…)
複雑な気持ちのまま、体重計に向かってまた驚いた。53キロと表示されたのだ。