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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VB-17

「よう、ナオヤにカヨ!久しぶりだなぁ」
「こちらこそ!ご無沙汰してま〜す♪」

 2人を見て声を掛けて来た山崎。応じて佳代は笑顔で挨拶を返す。
 そんな中、信也は2人を無視していた。

「なに?おまえら山崎の後輩」
「はい、3年生です」
「来年、ウチに来いよ。もっとも、ウチは才能だけじゃなくて頭も必要だがな」

 弁当を摂る部員達に混じり、佳代と直也は彼らの生の息遣いに触れていた。

「部員はこれだけなんですか?」

 佳代は訊いた。周りに居る数40名あまり。高校の野球部にしては少ないと感じたからだ。
 その瞬間、部員の周りから笑い声が上がる。フォローするように河原が言った。

「ここに居るのは全部1年生だよ」
「エエッ!?」

 思わず驚く佳代。

「ウチの部員は総勢94名。そのうちの1年生42名が、育成として、ここでトレーニングしてるんだ」
「じゃあ、2、3年生の人達は?」
「学校のグランドで練習をやっている」

 河原の説明では、入部した1年間は鍛える時期だそうだ。

「どんなに才能があろうが、身体が出来ていないヤツに硬式野球は無理だ。
 だから、1年間は基礎体力を向上させることが練習だ」

 “壊れない身体を作ってから才能を開花させる”

 光陵高校の持つポリシーに、2人は感銘を受けた。

 昼休みが終わり、午後の練習となった。
 休み前のウェイト・トレーニングから一転、縄ハシゴなどを使った俊敏性を鍛えるトレーニング。
 その後、キャチボール30分を続け、素振りを500回。

「よ〜し、上がれ!」

 日は、大きく傾いていた。今日のメニューが終わったのだろう、河原は皆をベンチ前に集合させた。

 ズラリと並んだ部員達。

「今日は…そうだな」

 部員達を睨め付ける河原。その目に、彼らは不安気な顔をみせる。
 おもむろに河原の手が指差した。

「…今日は弟も来ているからな。信也、おまえだ」

 その声に、信也は頭を下げた。
「よろしくお願いします!」

 信也は、バックネットを後にして構える。ノッカーはわずか6〜7メートルの距離に立った。

(…これって、藤野コーチのノックに似てる…)

 佳代も直也も息を呑み、行く末を見つめた。

「いくぞ!」

 若い指導者が大きい声を出し、バットを振った。高い金属音とともに、鋭い打球が信也目掛けて飛んだ。

「ハァッ!」

 信也は飛んでくる打球を必死に掴む。

…10…20…50…100…200…始まって30分経ったが、ノックは終わる気配がない。


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