やっぱすっきゃねん!VB-11
佳代が直也に送られて帰宅したのは、いつもより30分遅れだった。ちょうど食事中で、珍しく父親の建司も帰っていた。
「…ただいま」
玄関口まで出迎えた加奈は、佳代を見るなり笑顔を見せる。
「ずいぶんキツそうね。特別なトレーニングやってるって?」
「…身体中が痛くてだるくて…」
「ごはんは?」
「…先にお風呂入ってくる」
いつもより、ゆっくりと玄関を上がり、そのまま自室に寄ってからバスルームに消えた。
「はあ…気持ちいい…」
湯船に浸かり、身体が軽くなると少しは楽になったのか、二の腕や肩周り、胸のつけ根あたりを掌で擦り始めた。
「今やっとかないと、明日が大変だもんね」
湯船から上がっても、洗い場に腰掛けて太腿やふくらはぎのマッサージ繰り返す。
風呂を上がっても、キッチンに向かわずリビングに行ってストレッチをやり始めた。温まった筋肉を伸ばして疲労を軽減するために。
四つん這いの状態から、手をなるべく前に伸ばし、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「…ぐう…う…」
背中から肩周りの筋肉が伸び、心地よい痛みが身体に伝わる。
一哉に教えられた、様々なストレッチ方法を何度も繰り返すうちに、ようやく痛みが和らいできた。
「…ヨシ」
ストレッチを終え、次は夕食だとキッチンに向かった佳代。ちょうど食事を終えたようで皆、ダイニングに揃っていた。
最初に建司が声を掛けた。
「今日は大変だったらしいね。修に聞いたよ」
「さすがにバテた…走ったり、タイヤ引いたり…」
佳代は建司と言葉を交しながらダイニングを回り込むと、無防備な修の頭を思いきり引っ叩いた。
「いってーな!何すんだよ!」
「何じゃないでしょ!他人前でペラペラと喋るんじゃないの」
修は、膨れっ面で佳代を睨んで応戦する。
「…なんだい、本当の事じゃないか」
「男のお喋りは嫌われるよ。覚えときなさい」
朝の仕返しを終えてテーブルに座ると、すぐに加奈が温め直したロールキャベツを大皿で佳代の前に置いた。
「いただきま〜す!」
両手を合わせ、佳代はロールキャベツを口に運んだ。
「はあ…美味し…」
大きく頷いた後、おかずとご飯を交互に食べ始めた。みるみるロールキャベツが減っていく。
「はい、これも」
佳代が2杯目のご飯を食べだした頃、加奈がテーブルに深皿を置いた。レンコンやニンジン、ゴボウにタケノコが入った煮付け。
佳代は顔を歪ませる。