小さな隙間-1
二人きりでいる時に手を出してくる男が好きだ。下心を隠そうとする男が好きだ。理性を保てない男が好きだ。
愛より性欲を優先する男が好きだ。
「大切にしたいから」
笑いながら、照れたように言われた。
付き合おうと陽二が言ったのは今から十分程前のこと。
陽二の膝に置いた私の左手が途端に行き場を失くしてしまう。
「何を大切にしたいの?」
「え・・?」
「私を?順序を?」
「・・・」
「やっちゃったら大切にしてないってこと?」
「・・・」
迷う男が好きだ。
私の、意味なんてない言葉に囚われる男が好きだ。
「してからでも、大切にはできるでしょう?」
「・・・」
膝に置いた手を頬に移動させると、陽二の瞳が私を映した。
揺れる男が好きだ。固そうな意思が、崩される瞬間が好きだ。
「・・そうかな・・・そうかもしんない・・」
ぐだぐだ言う男が好きだ。焦らされてる感じ。
その理性をぶち壊して、早く私に触れて欲しい。さっさと負けて、私に全てをぶつければいい。
男が好きだ。
強くて、時々弱いから。
近付いてくる唇を受け入れる為に、私はそっと目を閉じた。
END