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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても-1

第1節

 寒い北風が吹く中、駅のホームで立ち尽くす。涙が次から次へと溢れ出し、コントロールがきかない。拭う事も出来ずに…ただ、電車の流れて行く様を見つめ続けている。


…あんなに欲しがったのに、一体何が手に入ったと言うの?

 

――話は数時間前にさかのぼる――

 

「ひーなちゃーんっ!」
 小春日和のなか、駅の入口で待ち合わせ。あんなに大きな声を出さなくても良いのに…。思わず顔をしかめてしまう。恥ずかしいのは苦手なのだ。
 今呼ばれた様に、私は雛(ひな)。そして、恥ずかしげも無く公衆の面前で大きな声を張り上げたのは…
「なんだよ、ジロジロ見て。」
「んー。68点かなぁって」
「厳しいッスねぇ…」
「あら。今日はこれでもオマケしたんだけど」
 陸と出掛けるのは初めてでは無いが、毎回の様にチェックしてしまうのが私の癖なのだ。やっぱり男の子だって見た目が大事だと思うのよね。
「そろそろ行こうか?」
 そう。今日は文化祭にやる、クラスの模擬店の買い出しに来たのだ。
「木材は先生が用意してくれるから…布関係とかペンキを買うんだよな」
「そうそう。メモってきたからガンガン買ってこ」
 勘の良い人なら気付いた思うけど、私と陸は恋人では無く、ただの友達。私の片想い進行中の相手なのだ。
 しかも、陸は彼女がいる。何も知らない陸は、彼女と私と…まぁ他にもメンツいたけど。たまに皆で遊びに行く。カラオケだったり、ボーリングだったり。
 私の気持ちなんか…これっぽっちも気付きはしないのだ。


「結構いっぱい買ったねぇ。」
 私達は両手に荷物を抱え、荷物をどうしようかと話していた。
「まだ日は高いのに、こんだけ荷物持ってたら遊びに行けないじゃん」

 駅のロッカーは?いや、宅急便で送るとか…。議論が続いたが、荷物が重かったせいもあり、真っ直ぐ帰る事に決めた。
「雛ちゃんは電車だから…荷物はマズいよね。結構込んでるじゃん?この時間って」
「あぁ…いつも込むんだよね、本数増やせば良いのに」ははっ、と苦笑いを浮かべる。痴漢にあったり酸欠になったり、加えてこの荷物では…満員電車は遠慮したい。
 私の表情を悟ったのか、陸は私を伺うようにして話しかけた。
「うーん…じゃさ、ちょっと歩くけど俺んちまで来る?荷物まとめて置いといた方が良いと思うし。」
 陸の家!?心臓が跳ね上がる。…こんなのは私のキャラじゃない。そう、冷静に…特に陸の前では冷静に。
「うん。その方が良いかもね。」
「じゃ、行こっか。」
 何も気付かない陸は、ニコッと微笑んで歩きだした。

 駅から15分だと言うわりには、坂ばかりの道で時間は倍かかってる気がする。だけど、荒い息を吐いているのは私だけ。…体力の差、なのかも。
「到着!」
 家の鍵を開け、二階へと上がる。
「雛ちゃん、誰もいないから気にしないで上がって?」
「うん。お邪魔します…」
 荷物を玄関に置いてブーツを脱ぐのに手間取う。小春日和と言っても、風は冷たかったので、手がかじかんで上手く脱げない。
「脱げた?荷物持ってくよ。」
 置いてあった荷物を持って、また二階へと上がって行く。…やっぱり、男の子なんだな、と感心してしまう。私は急いで付いて行った。

 部屋は思ったより片付いていた。
「きれいにしてんのねぇ」
「まぁね。はぁ〜ぁぁ。重かった。」
 部屋の片隅に荷物が積まれている。かじかんだ手を擦り合わせると、暖房を付けてくれた。
「雛ちゃん、手ぇ真っ赤。袋のあと付いてる。」
 そう言いながら、私の手をとって触ってくる。何気ないその行為にも、反応してしまう自分がいた。
「陸、触り方やらしい。ホストっぽい。」
「ホスト?んじゃ、こんな事してみたり?」
 笑いながら手にキスをする。私はヤバいくらいドキドキしてしまう。
「か、彼女に悪いから、そろそろ帰るよ」
「はぁ?何それ。今はアイツなんか関係無いじゃん」
 私の手を掴んだまま放してくれない。見つめ合う。そのわずかな時間さえも、苦しくて胸が張り裂けそうになる。こんなに好きなのに…好きだなんて気付かなければ良かった…。

「暗い顔して、どうかした?」
「手…放して」
 これ以上は惨めになるだけ。
「ヤだって、言ったら?」
「振りほどく。」
 宣言した通り、手をばたつかせた。
「無理だよ?」
 面白そうに笑いながら、私の両手首を片手で封じ込めバンザイのポーズをとらされた。
 どんなに抗ってもビクともしない。
「な…にするの…?陸…?」
 声がうわずってしまう。動揺してるのがバレてるかもしれない。
「キスしてもいい?」
「…えっ?…」
 何を言ってるんだろう?日本語なのに外国語の様に頭に意味が入ってこない。だけど…心臓がばくばくしてる事は確かで…。
「ヤだって言ってもやめないけど。」
「…ッぅ…!…」
 奪われる様なキス。唇同士がぶつかりあって形がつぶれているのが分かる。荒々しく互い違いに口付けされ、息も詰まる。思考回路も霧がかかって全く働かない。


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