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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿
【ファンタジー その他小説】

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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―争い編―-5

「んー、でも気にしなくて、いーよ↓↑ これ、幻影だもん」
「げ、幻影? 実体じゃないの?」
「ふっふー♪ なんとただのびっくり玉手箱!! だからさ、美由貴そっち行っていい?」
「いや、ごめん、生理的にムリ……幻影を解除してからじゃなきゃムリ……」
「……う〜◎」
 パシュ、と空気がはじけたような音がしたような、気がした。
「これでいーい? いーよ。真琴☆」
「さ、さっさと次行こ」
「うん、美由貴のおかげで助かったよ。いやいや真琴のためなら」
 美由貴が抱きつこうとしてきた腕をさっとくぐり抜け、淡白に次に向かう。一人芝居は正義的に無視。
 階段近くにこういった幻影を仕掛けるということは、やはり上に上がって欲しくないからだろう。先程はいきなりでびっくりしたが、結局は幻で、全て無視すればいいことだ。
 二階、三階と上がっていく。蜘蛛とか蛾とか蜂とか、とにかく虫系の幻が多く、生理的嫌悪に耐え、ひたすら無視していく。
「虫だけに無視? つまり……虫だけに無視!?」
「あー面白い面白いデジャヴだ美由貴ちゃんこのまま無視してていーい?」
「真琴!」
 ……ずっと虫系の幻だけだったから。気付くのが遅れた。
 遅れたところで身体に危害はない。結局のところは幻なのだから。
 だから、幻が与えたのは、心への害。


 ――空を飛んでいた。

 だけど翼が折れて――

 悲鳴。怒号。衝撃。轟音。炎上。

 赤。血の赤。火の赤。火は怖い。火。炎。焔。父と母を殺したもの。たくさんの命を奪った、熱。熱い。燃えていくモノ。


 目の前に広がる、幻の炎に、有り得ない熱を感じた真琴は、

「――……!」

 トラウマによって意識は閉ざされ、階段から崩れ落ちる。

『――××××……』

 美由貴の声が、酷く遠かった。


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