やっぱすっきゃねん!V@-9
「皆んな!おはよう」
部員達に挨拶した永井の顔は、嬉しそうだ。まるで、この日を待ちわびたように。
「今日は練習試合の日だ。今から、予定を伝える」
永井はポケットの手帳を開いた。
「まず、今から10時半まで練習。試合は第1が11時から、第2が15時開始だ」
その後は両試合の先発メンバーが発表された。当然、佳代の名前は無く、2、3年生の混成だった。
「それとピッチャーだが、第1が直也、淳、中里。第2は稲森。後は第1と同じだ」
ミーティングを終えるとアップが始まった。内容はいつもと同じで、ランニングにストレッチ、キャッチボール、素振りをこなすメニューだ。
ちょうどその頃、グランド向こうの駐車場に見知らぬクルマが数台止まった。中から現れたのは東海中の選手に関係者だった。
「藤野さん、葛城さん。ちょっとお願いします」
永井はそう告げると東海中の方へと駆けて行った。
「竹原さん、今日はありがとうございます!」
永井は東海中の監督、竹原に挨拶する。竹原も笑みを浮かべて永井に歩み寄った。
「こちらこそ。練習試合に呼んで頂いて、選手は喜んでますよ」
永井は、東海中の選手に目を向けた。かなり体格の良いのが揃ってる。
「東海さんも、今年は相当出来上がってるみたいですね」
永井の言葉に竹原は苦笑した。
「ええ。“打倒青葉中”をスローガンにこの冬をやってきましたから」
竹原の本音に永井は頷いた。彼とは監督に就任して以来、会合で何度も会ったが、その本音を語る姿勢に永井は好感を持っていた。
永井は、お返しとばかりに竹原に言った。
「ウチもですよ。東海さんを破るのは、ウチが掲げる目標達成には絶対必要ですから…」
「ほう、その目標ってのは?」
竹原は永井がハッタリを咬ましていると思った。だが、永井は力を込めて竹原に答えた。
「全国制覇ですよ…」
永井は帽子を取って頭を下げると自チームへと帰って行く。その後姿を竹原はポカンとした顔で見送った。
自チームの練習を見つめながら、一哉は葛城に言った。
「葛城さん、私はセンター後方から試合を見てますから、あなたはウチのバッテリーと守備を見ててもらえますか?」
葛城は困惑した表情を浮かべた。
「私は構いませんけど、何故センターから?」
「相手のウィークポイントを見つけるためです」
「…エッ?」
葛城はさらに分からないといった表情を繰り返す。が、一哉は自信に溢れた口調で答えた。