やっぱすっきゃねん!V@-8
翌土曜の朝7時。
練習試合当日。いよいよ新チームが動き出す日。
「なあに、佳代。その顔」
テーブルに着いた娘の表情を見た加奈は少し呆れ顔だ。が、本人は言葉の意味が分からない。
「…どうかした?私の顔」
「だって、眉毛つり上げちゃって。それじゃ“緊張してます”って相手に言ってるようなモノよ」
そう言ってクスクス笑う加奈。となりの修も笑っている。
「え〜っ…そんなにぃ」
気持ちをスバリ当てられた佳代。両頬を手で包み引き下げる。そんな仕草を見て加奈は微笑んだ。
「あんまり気を入れちゃダメよ。腰は治りかけなんだから」
「分かってる。私は記録員でベンチに入るだけだから」
佳代は焼けたトーストを皿に取る。同時に加奈が目玉焼きとニンジンジュースを使ったスープを置いた。これにバナナが1本付いた朝食。
「また…最近、やたらと野菜を使うね」
佳代は顔をしかめたが、加奈は強い口調で言い返す。
「食物繊維やビタミンもだけど、野菜にはミネラルも含まれるの。それが丈夫な身体にするのよ」
修は黙って食べだした。佳代は仕方なくニンジンスープを一気に飲み干すと、
「…うえぇ…」
辛い顔でトーストに目玉焼きを乗せ、ソースを掛けて口直しとばかりにかぶりつき、その勢いのまま朝食すべてを平らげてしまった。
「はあ…」
喉の渇きを覚えた佳代は、冷蔵庫から取り出した牛乳をコップに注いで飲み込んだ。朝食を終えた頃、時刻は8時を指していた。
「修!急ぐよ」
「…う、うん」
2人は慌てて学校に行く用意をすると、玄関から飛び出して行く。
「…姉ちゃん、今日、勝てるかなあ?」
自転車に乗り込む佳代に修が訊ねる。
「当ったり前でしょ!東海中には敗けたこと無いんだから」
佳代はそう言って修の背中を叩いた。
2人が学校に着いたのは8時45分だった。
「じゃ、またね」
佳代は保健室、修は部室にと分かれてユニフォームに着替える。9時前には2人共、グランドに整列していた。
時刻が9時を迎えた頃、永井に葛城、そして一哉達指導者が姿を現した。