やっぱすっきゃねん!V@-7
しかし、
「カヨ。おまえは今日から行うテスト生の指導をやってもらう」
「…エッ?」
思い描いていた佳代の考えは、あっさりと却下された。
「…そんな!だって…監督やコーチが休んだら復帰出来るって…」
諦めきれない佳代は喰い下がろうとするが、永井はそれを制すると、
「これはコーチとも話し合った結果なんだ」
「エッ?コーチも…」
永井は頷く。
「1週間休んだ者が、いきなり全力を出したらまた故障する。だから段階的に負荷を増やすトレーニングを行うと決めたんだ。
その最初の段階がテスト生を指導する係だ」
(コーチが言ってた別メニューってこれだったんだ…)
佳代は永井の指示に従った。納得はしてなかったが、“怪我をした自分が悪い”と言いきかせた。
こうして、佳代は指導員としてテスト生の面倒をみる事になった。ところが、これが意外と腰に良かったようだ。
指導のためにグランドを歩き回ったり、やり方を見せるなどの軽い運動が、身体の動きを整えるには効果的だった。
4日目ともなるとかなり動けるようになり、指導中にちょっと走ったりしたが腰の痛みはまったく無かった。
そしてテスト最終日。佳代は監督に許可をもらってテスト生とランニングを共にした。結果はすこぶる良好で、テスト生と変わらぬペースで走っても問題なかった。
(…やっぱり凄いや。コーチは…)
佳代は改めて一哉の知識と配慮の深さに感謝した。
佳代が喜びに浸っている一方で、新入生達のテストが終わった。果たして、先輩部員達の予想に反し、12名という新入生が入部を希望した。
もちろん、その中に修の姿もあった。
「修、よく頑張ったじゃない」
帰宅後、佳代は弟の努力を労った。すると、修はさも当然という表情で答える。
「当たり前だろ。言ったじゃない、また姉ちゃんや藤野コーチと野球やりたいって」
「…修…」
言葉が詰まりそうになった佳代。ごまかすように話題を変えた。
「…でもさ、新入部員が12人って予想外だったよ。部員皆んなが“10人以下”って言ってたんだから」
「オレが言ったんだよ。春休み中、姉ちゃんに聞いてた練習量を…」
それを聞いた佳代は嬉しくなった。もちろん、修も笑顔で、
「オレもだけど、皆んなも結構練習してたんだよ」
そっけない表情で語る修。その姿を見る佳代は目を細めて微笑んだ。